おとし穴のレビュー・感想・評価
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ブラック
「生まれ変わったら労働組合のある職場で働きたいな」などという工夫・井川比佐志。精悍な肉体だが性格は小心者。飯さえ食わせてもらえれば働くといった炭鉱夫だ。求人の張り紙を見て早速働いたまでは良かったが、日当をもらうとき、いつの間にか写真に撮られていたらしく、地図の場所へ行けば仕事がもらえると騙される。荒地にて白いスーツの男X(田中邦衛)に無残にも刺殺されるのだが、その一部始終を幼き息子(宮原)が目撃していた・・・
Xは駄菓子屋の女(佐々木すみ江)に大金を渡し、偽情報を証言するよう脅した。そのうち、井川比佐志の幽霊がむっくり起き上がって廃坑の町を徘徊する。記者(佐藤慶)は第二組合長にそっくりだとして、本人に会って確かめる。すると、その廃坑の近くを通る予定になっていたと言う。狙われたのは第二組合長だったのか?
第二組合長大塚(井川)は記者の話を聞いて背後に陰謀を感じたため、早速第一組合長の遠山(矢野宣)に連絡を取り、二人で駄菓子屋の女に会ってみようということになった。しかし、その間、殺し屋Xは戻ってきて女を殺してしまったのだ。この死のシーンは直接的ではなく、配達されたハガキを拾おうとしても拾えないことで表現していた。殺しのシーンがない代わりに、直前の巡査(観世栄夫)との情交シーンがあった・・・むむむ。
その殺しの現場に大塚がやってくる。幽霊となった女と死んだ男に生き写しの大塚のやり取りがブラックユーモアたっぷりで笑える。
やがて疑心暗鬼にかられた大塚と遠山は取っ組み合いのケンカとなったが、そのうち殺意が芽生え刺し違えて2人とも死んでしまうのだ。特に大塚は炭鉱夫の死んだ場所と同じ場所で絶命するという皮肉。少年にしてみれば、二度も父親が死ぬシーンを見てしまったような感覚。最後には涙を流すが、もともと死に対しては、アリやカエルなどの死を平気で見ていたので、死というものがわからなかったのだろう。少年の目から見た現実が幽霊たちの見る現実よりも、社会そのものをリアルに表現しているような気もする。欲と裏切り、貧困であっても幸せだということを言いたいのかもしれないが・・・
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