劇場公開日 1995年12月23日

「最期の時まで寅次郎」男はつらいよ 寅次郎紅の花 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0最期の時まで寅次郎

2019年11月28日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

楽しい

幸せ

シリーズ48作目。
翌1996年に渥美清が死去した事により、事実上本作がシリーズ最終作となった。
本作は色々語りたい事が多いが、まずは主なあらすじから。

満男の下に、泉が結婚するとの報せが。ショックを受けた満男は泉の結婚式に突如乱入し、式をメチャメチャにしてしまう。
そのまま当てもない旅に出た満男は、奄美大島の小さな島行きの船に乗っていた。そこで、ある女性と知り合う。
実はその女性は、満男も幼い頃に会っている、あのリリー!
リリーが今住んでいる家に招かれると、何とそこに、寅さんが!
そして、満男を追って、泉もやって来て…。

リリーと泉。寅さんにとっても満男にとっても、我々ファンにとっても、これ以上ないくらいのWマドンナ。
特に、ずっと焦れったい関係だった満男と泉の恋の行方が、やっとやっと!
突然の形でシリーズに幕が下りたが、満男と泉の恋の成就、最後に寅さんもリリーと再び廻り合い、まるで映画の神様が微笑んでくれたような、有終の美となった。

何と言っても本作は、渥美清の遺作。
前作でもドクター・ストップを受けたが、本作出演前はさらに深刻。医師からは「映画に出たら死にますよ!」とまで。
が、役者・渥美清は出演した。
その撮影中…
『男はつらいよ』のロケ現場にはファンが押し寄せ、「寅さ~ん!」と声を掛けると、渥美清はいつもならにっこり笑顔でファンサービスに応えていたらしいが、
本作撮影中は一切ファンサービスどころか笑顔や手も振ったりせず、終始うつむき座ったままで、当時の週刊誌などにあれこれ書かれたという。
それくらい、もう体力が無かったのだ。
何を言われてもいい。余力は全て、演技に。

本作での渥美清は、辛く、苦しそうなのが見てても伝わってくる。
頬や首回りなど痩せこけ、声などかすれ声。
動く事もままならず、ほとんどが座ったままの演技。(動いたり歩いたりの演技は、一部過去映像からの合成)
命を削ってまで、最期の時まで寅さんとして。
決してその姿に心痛するばかりではない。
「無様だねぇ…」とボヤキつつ満男の恋を見守り、リリーとのラストシーンでは、「男が女を見送るって事は、その女の家の玄関の前まで送るって事だ」と、これぞ寅さんらしい名台詞。
役者人生の全てを捧げた“車寅次郎”という一心同体のハマり役を演じきり、それをずっと笑わせ泣かせ魅せてくれた事に対して、言葉では言い尽くせないくらいの、心からの感謝と敬愛をーーー。

公開された1995年の1月には阪神淡路大震災が発生。
冒頭で寅さんは被災地でボランティアをする。
本作を見ると、いつも思う。もしシリーズが今も続いていたら、東日本大震災などの被災地にもきっと訪れ、笑顔と人情と温かさを届けてくれただろう、と。
エンディングで再び被災地を訪れ、被災者たちを労う。
「皆様、本当にご苦労様でした」
これが、寅さん/渥美清の最期の台詞となった。

そこに、お馴染みのエンディングの曲が掛かる。
本作のエンディング・シーンを見ると、私はいつも堪らなく目頭が熱くなる。
だって、これで遂に終わり。もう寅さんには会えない…。

…しかし!
もう二度と会えないと思っていた寅さんに、「お帰り!」と言う時がいよいよ近付いてきた!

シリーズ50周年、通算50作目。
24年ぶりの新作。
『男はつらいよ お帰り寅さん』
公開まで後1ヶ月! 後もう少し!

今年一年かけて、念願だったシリーズ全作レビューも遂に達成!
(旧シリーズは本作で締めにしたいので、“49作目”の『ハイビスカスの花 特別編』は申し訳ありませんが、割愛。ひょっこり書くかもしれませんが…)
週に一本のペースで見て、毎週のお楽しみとなり、やっぱり何度見ても、いいなぁ…。面白かったなぁ…。良かったなぁ…。
後は心置きなく、寅さんと再会するのを待つのみ!

近大
しゅうへいさんのコメント
2020年1月14日

 近大さんへ。

 やっとここまで来ました。ところが、近所の映画館は本日がラストで、しかも午前中の1回のみという悲劇が待っていました(泣) なんということでしょうか…。自分の運命を呪っております。

 …と書きながら他の映画館を調べていたら、夕方もやっているところがありました! 電車に乗って行かないといけませんが、今日観に行けるように仕事を頑張って早く終わらせようと思います!

しゅうへい
近大さんのコメント
2019年11月29日

ツアステ侍さん

コメントありがとうございます♪

そうなんです、寅さんは人情と愛情の物語なんです!
ご覧になられたら、温かな物語にきっと心満たされると思います(^^)

近大
零式五二型さんのコメント
2019年11月29日

おめでとうございます㊗️
関西人の私には、あのコテコテ関東風のノリや笑いのツボ違いを食わず嫌いしてましたが、NHKドラマ「少年寅次郎」を見て「そうじゃないんだ。昨今希薄になってきた人間同士の愛情物語なんだ」と気づかされ、寅さんシリーズを制覇したいと決意しています😊

零式五二型
masamiさんのコメント
2019年11月29日

kossyさん、浅岡ルリ子さんの発言、事実ですから。私、その番組リアルタイムで見てました。NHKの情報番組です。
そしたらですよ!堀尾アナが言った言葉が「それは浅岡ルリ子としてですか?
リリーとしてですか?」
はあ?もうアホかと!
浅岡ルリ子さんは即答で「もちろんリリーとしてですよ」
近大さん、長文すみません。

masami
近大さんのコメント
2019年11月29日

巫女雷男さん

全作レビューは念願だったので、達成感に浸っております(笑)

大まかなあらすじやどんな作風になるか、すでに山田監督もチラッと述べていますが、本編を鑑賞するのが楽しみですね♪(^^)

近大
近大さんのコメント
2019年11月29日

kossyさん

山田監督も浅丘ルリ子もこれで最後になるかもと思ったそうですが、それでも山田監督は50作目までを望み、残念ながら寅さんとリリーが結ばれる事は無かったらしいです。

一足早くの試写会羨ましいです! 自分は12月27日に有給を取ってまで初日に観に行こうかな、と(^^;

旧シリーズのレビュー、楽しみにしてます♪(^^)

近大
近大さんのコメント
2019年11月29日

同志のmasamiさん

本当に不滅ですよね。
寅さんは日本の至宝です!

新作のレビュー、楽しみにしてます♪(^^)

近大
2019年11月29日

全レビューお疲れ様でした✨
50作目予告編観ましたが、どういうストーリーにするか見ものです。☺️

巫女雷男
kossyさんのコメント
2019年11月29日

浅丘ルリ子は渥美清の具合の悪そうな姿を見て、「最後の作品になるかもしれないから、寅さんとリリーを結婚させてください」と山田監督に懇願したとか・・・(出典不明)。
いやはや、この言葉だけで感涙です。

気まぐれで応募した試写会が当たってしまい、12月10日に観ることになりました。予習のため全作品を再見しようと思っていましたが、間に合いません!
ぼちぼち拙いレビューをアップしていきます。

kossy
masamiさんのコメント
2019年11月29日

近大さん!
素晴らしいレビューです。
泣けますね・・・
確かに声も出ていないです。でもね、寅さんですよ。確かに渥美清は無くなりましたが、寅さんは永久に不滅です。
私は旧作は書きませんが、新作はレビュー書きますから。もう近大さん、同志ですから。
あの映画の共感ありがとうございます。

masami