「寂しさなんてのは歩いているうちに風が吹き飛ばしてくれらぁ~」男はつらいよ 寅次郎の告白 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
寂しさなんてのは歩いているうちに風が吹き飛ばしてくれらぁ~
「大したもんだよ、かえるのしょんべん。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどしだぁ」などと店で働く三平にお決まりの言葉で、“さくら”の人手不足をなげく寅さん。まだバブルが崩壊していない人手不足の現実。大企業では60歳定年になったことで定年過ぎた職人不足を嘆くタコ社長の言葉もあった。
一方、山野楽器の就職も断られた上に、母親・礼子が恋人を連れてきたことをきっかけに泉は家を飛び出してしまう。鳥取県の田舎町で寅さんと偶然会い、駄菓子屋のお婆ちゃんの家で泊まる二人。「おじちゃま!」というゴクミの声がぞくぞくする(俺もおっさんやな)。そこへ泉の自殺を心配した満男も加わり、かつて好きだったお聖さん(吉田日出子)と再会する寅さんだったが、彼女の夫は1年前に死んだとのこと。ピンクの灯りなんてのがかなり大人の雰囲気だったが、覗こうとした満男が2回目の転落事故。額の傷が本物じゃないかと思うほど生々しい。
寅さんと泉の母親についての想いを通して、全体的に「職業に貴賎はない」とかの職業に対するテーマがあったように思われる。満男の恋の行方もどこか行き詰まった感があるけど、寅さんの姿を見て、自分の生き方を決めるのが心地よい。
山野楽器の係長に山口良一、紙漉きの兄ちゃんに武野功雄と欽ドンファミリーが二人出演していた。思えば、ちょっと前に志穂美悦子、中原理恵、佐藤B作と、欽ちゃんファミリーとも相性がいい。ちなみに前田吟のTV版『積木くずし』では高部知子がブレイクしていた。懐かしい。
すでに常連となっていた三平ちゃんも馴染んできたし、お菓子職人の姿もちらほら。さらにここ3作の満男と泉ストーリーでは必ず最後が凧上げから始まる正月シーンがあり、毎度のことながら泉ちゃんが年始の挨拶で諏訪家を訪れていて、満男は友達の約束をすっぽかす展開が待ち受けている。友達なくすぞ!満男。そして、いつしか徳永英明の曲も定番になっていたようだ。