「長期シリーズのターニングポイントとなる青春映画♪」男はつらいよ ぼくの伯父さん マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
長期シリーズのターニングポイントとなる青春映画♪
12月27日の「男はつらいよ お帰り 寅さん」の公開が控えて、各地でのリバイバル上映も大詰め。
今回はMOVIX亀有で第42作目となる「ぼくの伯父さん」を鑑賞しました。
で、感想はと言うと、まあまあw
この作品が最新作の「お帰り 寅さん」の布石的かつ重要な作品で、また公開された1989年はドンピシャの青春時代を過ごしていたので、懐かしい演出描写で楽しめたのと、ほぼ同年代の満男の気持ちは凄く分かります。
浪人生で思春期の反抗もあり、後輩の泉に恋い焦がれる満男の苦悩を描いている青春映画の様な描写が多く、寅さんが脇にまわっていますが、これはこれで悪い訳ではない。
どじょう屋で満男の恋の悩みを聞く寅さんは頼もしくも愉快で大好きな伯父さん。好きな場面です♪
満男がバイクで泉に会いに行くのも、若い頃の後藤久美子さんもキラキラしていて、とても良い。
檀ふみさんはやっぱり綺麗です♪
寅さんをスクリーンで観れる幸せ感はありますが、今までの男はつらいよの王道パターンからの脱却には正直戸惑いは感じます。
公開されている49作品の中に幾つかのターニングポイントとなる作品がありますが、今作から寅さん役の渥美清さんの体調不良から物語の主軸は甥の満男に移っていく。
今作ではオープニングの寅さんの夢オチも無いし、主軸が満男になってる事から、青春映画の様になってる感じもします。
マドンナは後藤久美子さんではありますが、寅さんの恋愛の件は無しで、寅さんが一目惚れする感じのマドンナ的なゲストは檀ふみさん。
でも、旦那もいる人妻なので、寅さんとの恋愛話には勿論ならない。
檀ふみさんは18作目の「寅次郎純情詩集」でも出演されてますが、その時のマドンナは京マチ子さんでしたが、2回の出演でどちらもサブマドンナ的な扱いはなかなか勿体ない。
過去にマドンナ役で出演された方は沢山おられますが、出演の回毎に違うマドンナ役を2回以上演じられてるのは栗原小巻さん、大原麗子さん、松坂慶子さん、竹下景子さん。
檀ふみさんは18作目で演じられた雅子が小学校の先生だったので、結婚して佐賀に引っ越して、再び寅さんに出会うでも良かったのではないかなと思いますが如何でしょうか?
男はつらいよでは、なかなか繁華街のシーンや文化的な物が写る事は少ないですが、今作ではいろんな今風な物の描写があります。
また満男が旅先でバイクの転倒の際に助けてもらったホモセクシュアリティのライダーを男はつらいよの常連の笹野高史さんが演じられて、結構キワいコメディ演出も割りと珍しい。
公開が30年前で今ならLGBT問題に引っ掛かりそうな演出ですが、個人的には満男の未成年のアルコール摂取よりもこっちの方が気になりましたw
泉が世話になる叔母の家の叔父さんを尾藤イサオさんが演じられてますが、なかなか嫌みな役で寅さんとの正反対の人物に描かれてるし、寅さんと仲直りもしない。
以前の寅さんなら、大喧嘩になる所も満男の可愛さからジッと嫌みを聞いていて、最後にはピシャリと満男の事を誉めるけど、考え方の違いで流される。
喧嘩になる事を良いとはしないけど、ちょっとモヤッとするんですよね。
製作の事情から様々な試みがされているけど、寅さんの定番と言える、変わりない風景と変わらない流れを期待してると肩透かしを喰った様な感じがしなくもないかなと。
またラストで寅さんが遠い佐賀からくるまやの皆に電話を掛けて、祝福の様な言葉を掛けられるのもらしくないと言えばらしくない感じ。
寅さんの切なくもダンディズムが滲み出る終わり方が好きなのでなんとなく違和感があります。
渥美清さんの体調不良から徐々に満男にスライドしていくのはしょうがない事かと思いますが、長期シリーズの終演がそんなに遠くない事を暗示させる切なさもあります。
寅さんを観るといつまでも変わらない実家の様な居心地良さと懐かしさを感じます。
それが大好きで鑑賞するので、ちょっと残念と言えば残念。
ド定番と言える心地好いベタな演出を期待してた分の肩透かしですが、それでも寅さんを観る幸せはあります♪
この作品の自作が続編的になってるので、ワンセットで観ると印象も変わるかと思いますが、あくまでも単体で見た個人的な感想の1つと捉えて頂ければ幸いです。
どちらにしても最新作の「お帰り 寅さん」が楽しみで仕方ありません♪