劇場公開日 1987年8月15日

「三船敏郎と竹下景子の親娘。『回避型人間』と『触媒』としての寅さん」男はつらいよ 知床慕情 雨はにわか雨さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5三船敏郎と竹下景子の親娘。『回避型人間』と『触媒』としての寅さん

2021年4月4日
iPhoneアプリから投稿

4Kデジタル修復版というのが掛かっているので見てきました
1987年、シリーズ38作目だそうです

大まかなあらすじとしては
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おじちゃんが病気で倒れて入院しているところに寅次郎が帰ってくる。それは大変、おじちゃんが良くしてもらえるように病院に付け届けを、と良かれと思って動く寅次郎だが軽く一悶着。おばちゃんは、私がフォローしなくちゃならなくて大変だったと愚痴る

おじさんの入院で臨時休業していた寅屋だが、みんなで頑張って店を開けようとアケミ(美保純)なども手伝う。寅次郎は、俺も手伝いたいと申し出てるがまあ結局上手く行かない。跡取りな筈なのにまったく、この先どうなるんだ、とやはり愚痴るおばちゃんたち

寅次郎は皆が愚痴っているところを聞いてしまい、また旅に出てしまう(といういつもの展開)

旅先は北海道は知床。獣医の上野(三船敏郎)の家に泊めてもらうことになる。上野は10年前に妻に先立たれ、また一人娘りん子(竹下景子)も駆け落ちのように上京してしまい、頑固者にさらに磨きが掛かり、地元に人たちにも変わり者として煙たがられている

近所の飲食店の雇われママ悦子(淡路恵子)は上野のところを勝手に訪ねてきて憎まれ口を効きながらも何やら身の回りの世話などをしてくれている様子

そして竹下景子が何やら訳ありな感じで突然父のところに帰ってくる
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といったところでしょうか。以上あらすじ

===== 注意!! 以下、『軽いネタバレ』も含む感想です =====

自分は寅次郎と三船の獣医の両方に共感する部分があります

寅次郎はいろいろ上手くいかないと格好つけてすぐ旅に出てしまう。継続的に安定的な人間関係を築くのが苦手。面倒でも折り合いをつけて付き合うのではなくて、簡単にいうと逃げている。『回避型人間』というのでしょうか

そして三船の獣医は周りの人との付き合いが上手くない偏屈な頑固者

しかし家ではあまり「使えない」寅次郎ですが、旅先では楽しい人としてちょっとした人気者

寅次郎がいなければ三船と竹下の親娘はすれ違いのまま、娘は帰ってしまったところだった。そして寅次郎がいなければ三船は淡路恵子に気持ちを告げることもなく、淡路は新潟に帰ってしまうところだった

英語ではこういう人をcatalystといったりするようです。化学でいう『触媒』ですが、人と人を取り持つ人のこともいいます

そんな風に、外では意外と尊敬されて?役に立ったりしているのに、自分自身の家族などの継続的な関係の中ではなかなか上手く行かない寅次郎

獣医にはこうしなきゃダメだとか助言したりするくせに、自分では実行しない
自分自身は永遠に幸せになれない寅次郎。(今回は振られた訳ではない。でも寅さんから身を引いてしまった)

という毎度の定型のお話しですが
共感できる部分がある人には面白いと思います

竹下景子がショートヘアで美人。当時の髪型なのか、ちょっと宮沢りえみたいだった
満男は中一くらいなのかなあ。思春期に入る前の少し大人びた少年という感じ

心情的には星4にしたいところですが、他のいろいろな映画の評価とのバランスを考えると客観的(?)には星3.5ですかね

でも寅さんの「結構毛だらけ」も聞けるし、他の人物のいいセリフも要所にありますし、もちろん好きならおすすめです!
それからシリーズ本作に限りませんが、ひと昔前の日本のいろんな情景が見られるのもいいです

まあ寅さん好きな人はどちらにしても好きでしょうから、星評価はあまり関係ないですねw

雨はにわか雨