男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎のレビュー・感想・評価
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【渡世人と堅気の対比を軸に、寅さんに恋したヒロインが渡世人と言っても良いバイクサーカスの男との恋に揺れるシリーズ内でも哀愁深き作品。】
ー 今作の前半は、釧路で出会ったマドンナ風子(中原理恵)や、相部屋になった妻に逃げられた冴えないサラリーマン(佐藤B作)との絡みなど、多少暗めなトーンで物語が進む。
風子が理容資格を持ちながら仕事も長続きしない所や、彼女が恋したオートバイサーカスのトニー(渡瀬恒彦)も、やさぐれた感が強すぎて、寅さんが仁義を切ってが”アイツと別れてやってくれ。”と頭を下げるも”兄さんは見かけと違って純情なんですね。”と言って、サッサとその場を後にするシーンも、シリーズの中では珍しく情の無い描き方である。
救いは、トニーに会いに行ったまま、行方知れずになっていた風子から、結婚するという手紙が届き、さくらと博と光男、そして熊に追いかけれらる寅さんの姿が描かれる再後半かなあ、と思った作品である。-
寅さんが、人間らしい生活を一緒におくれる女性はいないのでしょうか? もしいるとしたら、それはどんな女性なんでしょうか?
第33作 男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎
1984年8月公開
前作の第32作は第8作からの超ロングパスを受けた作品でした
第8作で寅さんは博の父からこう言われたのでした
人間は絶対に一人では生きてはいけない
逆らってはいかん
人間は人間の運命に逆らってはいかん
そこに早く気がつかないと不幸な一生を送ることになる
寅さんは痛く感化されて、一騒動がまきおこるというお話でした
そして12年後の第32作では、寅さんはこう結論をだしたのでした
自分がこういう人間であるのはもう変えようがない
本当の人間らしい生活なんてものは、自分には縁のないことだ
そのように諦めたのでした
盛岡でかっての寅さんの舎弟に出会う序盤のエピソードは、寅さんは自分はもう堅気にはなれない、自分はもう変わりようがないと考えているという説明シーンなのでしょう
ならば、寅さんがもう自分を変えられないとしても、それでも人間らしい生活を寅さんと一緒におくれる女性はいないのだろうか?
もしいるとしたら、それはどんな女性なんだろうか?
それを探ってみようというのが本作のテーマだったと思います
中原理恵が演じたフーテンの風子は、寅さんが女性ならこんな感じになるだろうという人物です
これなら寅さんと釣り合うはずというわけです
果たして二人はすぐに意気投合して、彼女も寅さんと一緒に旅の暮らしをしてみたいとなります
でも寅さんは彼女に説教して拒絶するのです
寅さんはトニーにこう言います
「ヤクザな娘に見えるけれど本当はそうじゃない、まともな娘だ
所帯を持って、子供を産んで、幸せになれる娘だ」
中原理恵は出演時26歳、風子も同じなら寅さんには結局のところ若すぎたんだと思います
さくらのような妹的存在にしか見ていません
恋愛対象には始めから見ていないのです
なら、もう少し寅さんの年齢に近づけた風子なら?
でもそれってリリーさんじゃないですか
結局、本作は寅さんにはやっぱりリリーさんしか釣り合わないことを確認したお話だったと思います
佐藤B作の演じたネクラは、風子がトニーをどうしようもない男とわかっていても惹かれてしまい不幸に陥ちるというお話の補助線になっているもので必要な登場人物だと思います
では、寅さんと釣り合う女性は他に
いないのでしょうか?
寅さんのように、だらしなくて、バカで、下品な女性なら?
下町育ちならなお良い
つまり、女寅さんのもうひとつのタイプです
これなら寅さんと釣り合って所帯を持って人間の本当の生活というものを送れるのでは?
それが美保純の演じたタコ社長の娘あけみです
でも彼女は本作では寅さんとは違う男性と結婚します
こんな女性と寅さんがもし結婚するならこんな花嫁になるだろうというのを、監督は私達観客にみせてくれたのだと思います
でも、これじゃあ駄目だ
だいたい寅さんがこんな女に惚れる訳がない
そう簡潔に結論を彼女の嫁入りシーンとして表現したのだと思います
とはいえ美保純の女寅さんはなかなか面白く魅力的なキャラクターなので彼女は第39作まで連続で登場することになります
さて冒頭の夢は、日活アクション映画のパロディ
これは、本編にこれまでの寅さんシリーズには登場したことのないハードなヤクザもんのトニーが登場するからでしょう
しかもそれを東映の暴力的イメージの強い渡瀬恒彦が演じるのです
ホンワカとしたお話の寅さん映画を見に来たお客さんに、トニー役の渡瀬恒彦がいきなり登場するとびっくりしてしまう
それを防ぐ狙いだと思われます
渡瀬恒彦は日活には出演したことがありません
なので、もし彼が日活アクション映画に出演していたらこんな感じかな?って雰囲気に仕上がっていてとても楽しいです
そもそも松竹でこんな映画一つもないのですから
なんか監督もスタッフも、役者陣もノリノリです
セットも衣装も照明もいつもの夢シーンとは段違いに気合いがはいってます
寅さんが風子と初めて会話をするのは、釧路の有名な名所の幣舞(ぬさまい)橋
釧路は霧の町で有名です
なので「夜霧にむせぶ寅次郎」というタイトルなのでしょう
そして霧の街といえば、ギャング映画ならサンフランシスコに決まっています
その連想ゲームで夢シーンが日活アクション風になったのでしょう
二人が出会った季節は恐らくゴールデンウイークの前ぐらい
自分も大昔同じ5月頃に釧路にいったことを思い出しました
釧路空港が濃霧で飛行機がなかなか降りられず、その戻りの最終便で東京に帰る予定だったので危うく帰れなくなりそうになったものです
蛇足
2023年夏、OSO18 という熊が駆除されたそうです
牛などを多数襲って恐れられていた熊だそうですが、ついにハンターに依って駆除されたというニュースをつい最近目にしました
その場所が、北海道東部の川上郡標茶町から厚岸郡厚岸町一帯にかけてだそうで、正に本作のラストシーンの辺りなのです
寅さんみたいに雪駄を半分食われた人がいたかも知れませんね
vol.33 夢がいつもの空想に、原点回帰か?違った。冒頭では柴又...
vol.33
夢がいつもの空想に、原点回帰か?違った。冒頭では柴又に帰ってこない。
・あけみ、初登場。うちの姪にクリソツ(笑)社長への挨拶に泣ける。満男は中学生、吹部に。
・登、超久しぶりの登場。そしてこれが最後…これで最後…悲しすぎる、寂しすぎる。
・マドンナは中原理恵。あまり共感を呼べない設定なのがかわいそうだった。
・佐藤B作、要るか?「ネクラ、さくら」の為だったと言って過言ではない(笑)
・渡瀬恒彦、要るか?1番中途半端な役でなんだか気の毒だった。
・マドンナの顛末に唖然。そしてラストのドタバタ…うーん、なんとも。
マドンナは田辺エージェンシーの売れっ子だった中原理恵。 美保純がタコ社長の娘役で初登場。北海道から東京に来た中原理恵は寅さんと渡瀬恒彦の間で心が揺れる。
BSテレビ東京で映画「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」を見た。
劇場公開日 1984年8月4日
1984年製作/102分/日本
配給:松竹
山田洋次監督53才
渥美清56才
倍賞千恵子43才
中原理恵26才
秋野太作41才
佐藤B作35才
美保純24才
渡瀬恒彦40才
マドンナは田辺エージェンシーの売れっ子だった中原理恵。
美保純がタコ社長の娘役で初登場。
寅さんは北海道で中原理恵、佐藤B作、渡瀬恒彦らと出会う。
北海道から東京に来た中原理恵は寅さんと渡瀬恒彦の間で心が揺れる。
ストーリー、脚本は大したことは何もない。
山田洋次監督はこういう作品を量産してきたと思う。
満足度は5点満点で2点☆☆です。
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