劇場公開日 1981年8月8日

「寅さん屈指の心に染みるお話でした 本当に「男はつらいよ」です」男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0寅さん屈指の心に染みるお話でした 本当に「男はつらいよ」です

2023年5月4日
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鑑賞方法:VOD

1981年8月公開、第27作

マドンナは松坂慶子
公開時29歳

1979年7月から10月にかけて全13話放映されたテレビドラマ「水中花」でブレイク
その主題歌「愛の水中花」は本人の歌唱によるものでその年の大ヒットにもなりました
その番組と主題歌が、それまではせいぜい中堅どころの女優に過ぎなかった彼女をスターに押し上げたのです

翌年の1980年4月公開の「五番町夕霧楼」では主演女優に抜擢
1981年1月公開の「青春の門」でも主演
そして同年8月公開で本作なのです

ついでにいえば、次の年の1982年10月公開の大ヒット映画「蒲田行進曲」でも主演女優となり、映画女優ナンバーワンと誰もが認める存在となったのです

つまり映画女優として大スターにあれよあれよと駆け上がったばかりの最高の彼女の瞬間を本作は写しているのです
宝山寺門前のレストランでタンクトップ姿になるシーンが正にそれです

あまりの美しさに感嘆するばかりです
「男はつらいよ」のマドンナは歴代総勢47人いるそうですが、美しさで言えば彼女が最高峰だと思います

「ぬけるような白い肌、それがうれしい時なんか、パッ〜と桜色に染まるんだよ
悲しい時は透き通るような青白い色
黒いほつれ毛が二筋三筋
黒い瞳に涙をいっぱい溜めて・・・」

寅さんの解説に掛け値なし
その通り!上手いこと表現するなあと
本作をみる全員が納得したと思います

マドンナと大阪で再会するのは石切神社です
大阪の東のはずれ、生駒山の麓です
結構標高も高いところで大阪平野が一望できます
彼女に生き別れの弟がいると聞くのは生駒山の宝山寺

どちらも1966年の映画「河内カルメン」の舞台の直ぐ近くです
大阪の女を本作で描くならば、大阪の女を描いたその映画に敬意を示そうという山田洋次監督の思いを感じます

新世界は東京で言えば浅草が一番近い雰囲気かも知れません
この当時はもっとワイルドだったと思います
今は健全な観光地となっています

おふみさんが、寅さんの宿に押し掛けて泊まって行ったあの夜
彼女は酔ったふりをして寅さんに抱かれに来たのだと思います
だから早朝に彼女は怒ったように帰っていくのです
寅さんはそんな女心にはまるで気付けない男なのです
手を出さないのは寅さんなりの美学というか、臆病というかどちらもです

翌朝チラシの裏の置き手紙でようやく彼女の本心に気付くのですがもはやあとのまつり
みにくくともあがけばよいのに、それができないのが寅さんなのです
ホント男はつらいよです

おふみさんは気乗りしなかった結婚を決断してしまうのですから

夏にとらやに寅さんを訪ねて上京して来たのも、これが結婚を止める最後のチャンスだと自分を納得させる為のものだったと思います
寅さんに自分を攫って逃げて欲しかったのです
でもそんなことできない寅さんだということも彼女自身がよ~く分かっているのです
とらやからの去り際の突然の大雨は寅さんの心の涙ではなく、おふみさんの涙だったのだと思います

ラストシーンで遠い遠い対馬にまで寅さんが会いに来たのは何故?
未練?

女心に疎い寅さんもあれからつらつら考えて、彼女が訪ねて来たその本当の意味にようやく思い当たったのでしょう

そうなると彼女の結婚生活が上手く行っているのか心配になって、いてもたってもいられなくなったのでしょう

彼女からの幸せな新婚生活を報告する手紙とは、入れちがいになってしまったのです

彼女の幸せそうな姿
彼女の旦那の真面目そうな好青年の姿
どこからどう見てもお似合いの新婚さん
一目それをみたら、もうそれだけで寅さんの用事は全部済んだのです

これで良かった
彼女に手を出さなくて良かった
彼女を攫って逃げなくて良かった

本当に男はつらいよ
寅さんはいい人として去っていくのみなのです

また日本全国フーテンの旅の始まりなのです

寅さん屈指の心に染みるお話でした

あき240
あき240さんのコメント
2023年7月5日

もーさん
コメントありがとうございます
本作の松坂慶子は呆れるほど綺麗で
演技も良かったですよね
おっしゃる通り彼女は東京出身なのに関西訛りも自然でイラッ来なかったですね
彼女がトップスターだ!と誰もが納得した作品と思います

あき240
もーさんさんのコメント
2023年7月4日

こんばんは。私は関西人なので”松坂慶子は関西弁大丈夫かな?”と思って観ましたが違和感無かったですね。私も寅さんシリーズの中では上位に入る出来だと思うし個人的にも好きです。
松坂慶子はデビュー当時から観ていますけれど(ウルトラセブンもリアルタイムで。) 最初はひどい大根だったのに、上手い良い女優さんになりましたね。

もーさん