「寅次郎親心」男はつらいよ 寅次郎かもめ歌 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
寅次郎親心
シリーズ26作目。
OPの夢は、とある貧しい村で、悪代官が天狗の祟りと騙して、村の娘を差し出させようとする。そこへ、旅人・寅次郎が身代わりとなり、悪代官を懲らしめる。
序盤の騒動は…
さくら家族が遂にマイホームを購入。
帰って来るなり、お邪魔しに行く寅さん。
狭い家だが、2階に自分の部屋が設けられている事に感激。このシーン、好きなんだなぁ…。
引っ越し祝いとして、2万円(当時としては大金)を贈る寅さん。
が、額が額なだけに受け取れないさくらたち。
それに怒る寅さん…。
いつもは寅さんが何かしでかして喧嘩になるが、今回ばかりは寅さんに同情。
過剰な親切心は時に相手の重荷になる事がある。ここら辺、さすが山田監督、描き方が巧い。
でも…、そもそもそのお金、闇営…じゃなくて、源ちゃんから“借りた”お金なんだけどね…(^^;
旅先の北海道で、テキヤ仲間の死を知る。
訪ねると、忘れ形見のすみれがたった一人で暮らしていた…。
マドンナ・すみれに、元キャンディーズの伊藤蘭。
アイドルから女優に転身したばかりの頃で、初々しさが実に魅力的。
右京さんが惚れたのも分かるなぁ…。
満足な学も無いすみれ。
密かな夢が。上京して、働きながら学校に通いたい…。
そんな夢を叶えてやろうと、寅さんはすみれを連れて柴又に帰り、とらやで面倒を見る事に。
(帰ってくるなり、久々登場の米倉斉加年お巡りさんに誘拐犯に間違われる珍騒動)
いつものパターンなら、年甲斐も無く惚れるか、若者の恋の指南役だが、今回は7作目『奮闘篇』以来のパターン。
あくまで保護者/親代わり。
またまたその過保護振りがやれやれ…。
すみれは定時制高校の試験を受ける事に。
一緒になって勉強したり(と言ってもほとんど居眠り)、試験や面接について行ったり、
晴れて合格! 送り迎えは言わずもがな、授業にも顔を出したり…。
本当に心配な親心なのか、それともやはり少なからず惚れてるのか…。
昼はバイト。(バイト先はセブンイレブンで、当時まだ“コンビニ”という言葉が浸透して無かったのか、“スーパー”と言っているのが時代を感じる)
夜は学校。
仕事しながら勉学に励む様は、山田監督の後の『学校』に通じる。原型かも。
学びの尊さを訴える。
そんなある日…
北海道から遥々友人が訪ねて来る。
…いや、友人と言うより、元恋人。
再会して口喧嘩になるが、若い二人の恋は消える事は無かった。
その日、すみれは朝帰り。
寅さんは激怒。
さらに、すみれはその恋人と結婚を考えてるという。
それを聞いて、寅さんは…。
面倒を見る筈なのに、相手に恋人が居ると知って、再び旅に出る寅さん。
親心と恋心の半々だったのかもしれない。
旅立つ直前、相手が真面目な男かどうか念を押し、「幸せにならなかったら承知しねぇぞ」と、すみれのこれからの幸せを祈る。
もし寅さんが全うに結婚して、年頃の娘が居たら…。
こんな父娘関係なんだろうなぁ…と、思わせる。
その恋人役に、こちらもまだ若かった村田雄浩。図体はデカイが、真面目な青年像は安心して良し。
ゲスト出演で白眉は、2代目おいちゃん・松村達雄が定時制高校の教師役で久々の登場。便所掃除の詩の朗読が秀逸!
また、関敬六が寅さんのテキヤ仲間・ポンシュウ役で初登場、以後ほぼサブレギュラーとなる。
定時制高校の教師や用務員のおばちゃんと仲良くなり、すっかりこの定時制高校が気に入った寅さん。
こっそり、入学願書を提出していたが…、
ある理由から入学の資格ナシ。
本当は学びたかった寅さんと、それを知って一筋の涙を流すさくらが悲しい。