「あーあ、どっか広い所へいきたいなあ」男はつらいよ 寅次郎忘れな草 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
あーあ、どっか広い所へいきたいなあ
今日は2020年5月4日です
コロナウイルス禍は収まらず
今夕、首相が緊急事態宣言を5月末まで伸ばすと声明するそうです
あーあ、どっか広い所へいきたいなあ
どこまでも、どこまでもずーっと地平線のつながっているような
序盤で博が寝転がってひとりごちるのと同じ気分です
網走は、札幌から特急で当時は確か6時間かかる最果ての街です
その網走駅から釧路に向かう釧網線という単線のローカル線がでています
1両だけのディーゼルカーに乗り換えて網走駅をでると、寅さんとリリーがであった漁港が右手の車窓から見えます
家並みもすぐに途切れて20分ほど何も無い野原と浜辺の間をガタゴト進むと夏場の観光シーズンだけ臨時停車する原生花園駅という無人駅に着きます
何もないホームの右手は真っ青なオホーツク海の丸い水平線です
左手はどこまでもどこまでもずーっと地平線の続く湿原が広がっています
シーズンならその湿原に花が一面に咲いています
序盤のロケ地はそこではないようですがその光景を思い出しました
とても良く似ています
きっとこの近くなのでしょう
仕事にも煮詰まって、毎日残業して夜遅くアパートに帰ってきて、朝また会社に出て、それを毎日繰り返しているだけ
一体自分の人生って何だろう?
そんな気分になって行くところです
寅さんの気分、リリーさんの気分が良く分かります
そんな地平線を見てみたら、都会のことなんかどうでも良いいことと思えるものです
リリーさんこそは寅さんの本当のマドンナ
男はつらいよの物語の本線と言えると思います
本作はリリーさんとの慣れ染めのお話です
水原くんとめぐみちゃんの恋の始まりのエピソードが、二人の相似形として描かれる脚本が見事です
忘れな草の花言葉は「真実の愛」、「私を忘れないで」
その忘れな草の鉢は恋人のように仲良く二つ並んでいるのです
リリーさんはその忘れな草の青い小さな花がいっぱいの鉢植えを取り上げてしみじみと見つめるのです
そして結局、寅さんはまた地平線を見たくなってしまうのです
コロナウイルス禍が夏には収まって、あの原生花園駅をまた訪れてみたいものです