「運命のマドンナ」男はつらいよ 寅次郎忘れな草 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
運命のマドンナ
シリーズ11作目。
マドンナにいよいよ、浅丘ルリ子演じるリリーが登場!
通算最多となる4回、年末公開の新作にも出演。
シリーズ屈指の名マドンナ、寅さん永遠の恋人!
運命の出会いは、旅の空の北海道。
夜行列車の中で、車窓の景色を眺めながら涙をひと筋流す女が気になる寅さん。
売をしてると、その女が声を掛けてくる。
初めて会った時から、二人は自然と意気投合。
寄り添い合うかのように、お互いの身の上話に。
女の名は、リリー。
流れの歌手で、各地のキャバレーなどを回っているという、聞けば似たような旅暮らし。
一度は別れるが、暫くしてリリーがとらやを訪ねてくる。
とらや一同ともすっかり打ち解ける。
寅さんともとらや一同ともこれから長い付き合いになると思うと、感慨深いものがある。この時、ほっぺにチューされたまだ幼い満男はその後成長して再会、お世話になる。(48作目で)
性格は明るく、フレンドリー。
今の言葉で言うと、ハンサム・ウーマン。
気も強く、後の作品になるが、寅さんと口喧嘩したって敗けはせず、逆に言いくるめてしまうほど。
恋も多い。
「惚れられたいんじゃなく、惚れたい」…リリーの名台詞の一つ。
まさしく、女寅さん!
とにかく、浅丘ルリ子が魅力的。いい女。カッコいい。
そこに尽きる!
本作はリリーの事だけでレビューが書けてしまいそうだが、それ以外でも結構見所あり。
冒頭の柴又帰り。ちょうど父親の法事中。その最中とらや一同を笑わせ、御前様から大目玉。(無論、その後大喧嘩)
満男の為にピアノが欲しいというさくら。寅さんが買ってきてやるが、おもちゃのピアノと勘違い。皆、寅さんに気を遣うも、またまたタコ社長が余計な一言を…。
旅先の北海道で、牧場の仕事を手伝う事になった寅さん。体力には自身あると言いながら、僅か一日でダウン。牧場の家族が心配してとらやに便りを送り、さくらが迎えに行く…という珍しいパターン。
人の幸せ度合いについて談義。世の中には、いい生活はしているが最低の人間も居れば、生活は貧しいが善き人間も居る。寅さんも人並みの生活なんてしてないが、それ以上のものを持っている。すると寅さんは、さしずめ上流階級…?
では、リリーは…?
寅さんと似ているが、決定的に違う点もある。
寅さんには帰る家があり、帰りを迎えてくれる家族が居るが、リリーにはそれが無い。
母親が居るが、仲は険悪。狭く、ボロいアパートの一室の借り暮らし。
実は仕事も嫌な事ばかり。
ある日の夜遅く、べろんべろんに酔っ払ってとらやにやって来る。
何もかも嫌になって、全部投げ出して旅に出たい。
なだめる寅さん。
旅暮らしの女の悲哀。本音。
喧嘩となり、リリーとはそれっきり。
リリーは幸せになれない女なのか…?
リリーの幸せを願い、寅さんもまた旅に出る。
寅さんの願い通り、リリーは人並みの幸せを手に入れた。
変わらぬ旅暮らしの寅さん。
それぞれの道を歩んだかと思いきや、その後二人は何度も何度も巡り合う事になる。