男はつらいよ 寅次郎恋歌のレビュー・感想・評価
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【”人間は絶対に一人では生きていけない。”昭和の名優志村喬演じる博の父が妻を亡くした後にしみじみと語る名台詞に影響を受けた寅さんが、柴又で喫茶店を営むシングルマザーへの淡い恋を描いた逸品。】
■博の母親の葬儀に寅次郎が現れ、博の父(志村喬)に同情した彼は、博やさくらを東京に帰し、岡山に残る。
その後、柴又では開店したばかりのコーヒー店の主人・貴子(池内淳子)がとらやを訪れるが、そこにばったり寅次郎が帰って来る。
◆感想
・今作は、昭和の名優志村喬の訥々とした”本来の人間の生活”について語る名台詞を軸に構成された逸品である。
・その言葉を聞いた寅さんが、柴又に帰りシングルマザーの喫茶店を開いたばかりの貴子に心惹かれながらも、彼女の内気な小学三年の息子に友達を得させるために行った事で友達が出来、土手で遊ぶシーンや、貴子が息子に友達が出来、嬉しさを隠しきれないシーンなど、彼女を気遣う姿が心に響く作品である。
・通夜の席で、博が亡き母を想う涙ぐみながらの台詞も沁みる。
<今作は、シリーズ初めての長尺作品であるが、決して冗長になる事は無く、逆に岡本茉莉演じる大空小百合が所属する旅一座が初登場したり、おいちゃん役の森川信の残念ながら最後の出演作で有ったり、寅さんシリーズの大きな変化点になった逸品である。>
是非本作と第32作をセットでご覧下さい
第8作 男はつらいよ 寅次郎恋歌
1971年年末公開
寅さんが結婚して家庭を持ちたくなるというお話です
博の母の葬儀をきっかけにして、大学を定年退職後、郷里の岡山県は備中高梁のお屋敷に1人で孤独に暮らす博の父と寅さんの交流が始まります
10年ほど前、安曇野の庭一杯にりんどうが咲く一軒家の農家の開け放した縁側から明かりのついた茶の間で食事をしているのが見えたとき、これが本当の人間の生活というものかと涙した
その思い出をしみじみと語る博の父の言葉に寅さんはいたく感化されてしまいます
人間は絶対に一人では生きてはいけない
逆らってはいかん
人間は人間の運命に逆らってはいかん
そこに早く気がつかないと不幸な一生を送ることになる
志村喬だからこその説得力を持つ名シーンでした
それで寅さんは結婚して家庭を持ちたくなったのです
今回のマドンナは池内淳子
出演時38歳
上品で清楚で着物姿が美しい
広くて形のよい丸い額が高い知性を感じさせます
なのに色気が匂い立っているのです
そしてその額の下の大きな目が見つめて話すその言葉遣いが姿形と同じほどに美しいのです
でもイントネーションは江戸っ子だとわかるものです
柴又にはいないタイプ
あの御前様でさえすれ違った際に、つい二度見してしまうほど
池内淳子は長い芸歴でその演技は群を抜いた安定感があります
この当時はテレビ女優ナンバーワンで、出演すれば高視聴率間違いなしと言われたのも当然だと思えます
この彼女が帝釈天の脇に新しくできた喫茶店のママさん役
しかもお誂え向きに未亡人
小学3年生の男の子がいますが、寅さんにすぐなついてしまう
もう展開がいつも通りと分かってしまいます
結局、寅さんから身を引く形で旅にでて終わります
冒頭の惨めな旅の一座とのパートは、貴子が昔から旅の一座になりたかったことを寅さんが聞いて我に返る為にあった訳です
こんな俺や旅の一座のような人間の運命にこの人を引きずり込んではいけない
だってりんどうの花言葉は「誠実」なんです
彼女を自分のような稼業の世界に引き込んではいけない
自分の欲望の為に女性を不幸にはできない、それが寅さんの誠実なんです
これが俺の人間の運命なんだ
これに逆らってはいけない
不幸な一生にこの人もなってしまう
そんなことはできないんだという思いを噛みしめながら、寅さんは秋晴れの朝日を浴びています
寅さんが昨晩泊めてもらった農家は婆さんの独り住まいのようです
きっと、寅さんはりんどうが庭一杯に咲いて開け放した縁側から見える明々とした茶の間で子供たちと食卓を囲む一軒家の農家はないものかと探していたに違いありません
でもいくら探しても見つからずここに泊めてもらったのでしょう
りんどうは一本もない畑の中の一軒家です
まあ俺はやっぱりこういう運命なんだよなあと諦めの顔で朝日を見上げています
そこに冒頭の旅の一座が通りかかって再会をよろこび、トラックの荷台に載せてもらって一緒に今晩の宿をとるようです
一座もなんとか巡業を続けているようだ、俺も身ひとつでなんとか生きていけらあ
「ね、先生、これが寅次郎って人間の運命なんですよ」
「人間は人間の運命って奴に逆らっちゃあ、いけないんでしょ、先生」
そんな寅さんの心の声が聞こえてきます
そこでエンドマークとなり映画は終わります
ところがこのお話、続きがあります
それは1983年の第32作「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」です
本作からから12年後の超ロングパスになります
舞台は今回と同じ備中高梁
あれから博の父はどうなったのか
それが語られます
本作でチラリと写った白神食品店がその作品では主要人物の家として登場したり、本作では博の母の通夜と葬儀をした屋敷も登場します
踏切近くの小川に架かる小さな石橋もドラマチックなシーンの舞台になります
その作品で寅さんはまたも人間の運命について考えるのです
今度はりんどうの咲く農家の食卓ではなく、取り込み忘れた家族の洗濯物の形となって、寅さんに人間の運命についてもう一度考えさせるのです
この第32作で、自分には本作の物語がやっと完全に閉じられたと実感する事ができました
是非本作と第32作をセットでご覧下さい
タイトルの寅次郎恋歌とは?
終盤の寅次郎のハガキの事だと思います
汚い字でハガキ一杯に書いてありました
寅さんに学があったなら、きっと「りんどうの‥…」てな感じの和歌を書いて送ってたんだろうと言うことだと思います
自分も学がないので探してみたらこんなのがありました
「りんだうの 花とも人を 見てしかな かれやははつる 霜がくれつつ」
和泉式部
(あの人を)りんどうの花であると見たいものです
りんどうは霜が降りても枯れはしないのですから
寅さんがハガキに書きたかったのはこういうことだったと思います
森川のおいちゃん
さくらの健気さには脱帽
屈指の名シーン。
おい、まくら、さくらの回(笑) ・オープニングとエンディングの劇団...
山田洋次監督は劇場の客やお茶の間の視聴者がイライラ、ジリジリするのを何もしないで放ったらかしにする放置プレイの名手だと思う。
BSテレ東で映画「男はつらいよ 寅次郎恋歌」(1971)を見た。
劇場公開日:1971年11月20日
1971年製作/114分/日本
原題:Tora-san's Love Call
配給:松竹
渥美清
倍賞千恵子
森川信
笠智衆
前田吟
梅本泰靖
穂積隆信
吉田義夫
三崎千恵子
太宰久雄
中沢祐喜
岡本茉利
谷村昌彦
志村喬
池内淳子
例によって車寅次郎は半年ぶりで故郷柴又へ帰ってきた。一同は歓迎したつもりだったが、些細な言葉のゆき違いから竜造やつねと喧嘩となり、又もや旅にでることになった。寅が去って静かになったある日、博の母が危篤という電報が入り、光男を竜造夫婦に託した博とさくらは岡山へ急いだ。博の父の[風票]一郎は元大学教授で、研究一筋に生きてきた学者だった。葬式の日、驚ろいたことに寅がヒョッコリ現われた。柴又に電話したことから、葬式のことを知り、近くまできていたから寄ったという。
新型コロナウイルスのために自粛生活が続く中、日常の楽しみは少ない。
毎週土曜日にテレビ東京で見られる「男はつらいよ」シリーズは本当にありがたい。
どの作品でも思うことは倍賞千恵子がとても美女で、
前田吟がすごくイケメンであること。
毎回登場するマドンナは当代の人気美人女優なのはもちろんである。
今作のマドンナは池内淳子。
ゲストの志村喬の存在感を大きく感じる。
おんなひとりで小学生の息子を育てながら喫茶店を経営する池内淳子には借金問題がある。
寅さんはそれに気づきながら何もしないでそこから逃げだしてしまう。
「全く馬鹿だねえあいつは!」
おいちゃんがそう言う前にTVの前にいるオレがいつも言ってしまう。
山田洋次は劇場の客やお茶の間の視聴者がイライラ、ジリジリするのを何もしないで放ったらかしにする放置プレイの名手だと思う。
その手法は現在でもまだ製作が続いている「家族はつらいよ」シリーズにも踏襲されている。
上映時間は114分。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
来週の「男はつらいよ 柴又慕情」(1972)マドンナ 吉永小百合
が楽しみ。
寅さんシリーズのなかでも、より哲学を感じる作品
源公がいない!
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