「もう寅さんの映画の中でしか、人と地元とのつながりを見れなくなってしまった」男はつらいよ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
もう寅さんの映画の中でしか、人と地元とのつながりを見れなくなってしまった
やっぱり盆暮れには観たくなりますよね
寅さんみたいにたまには懐かしい地元に帰って、親兄弟、幼なじみ、近所の人々の顔みたくなるのと同じなんでしょう
都会で独り暮らしも長くなると、もうフーテンの寅さんみたいなもんで、地元のみんなからはどこで何やってるんだかみたいなもんです
高度成長期を駆け上り、みな忙しく働いている昭和の中で、自分の代わりに地元に帰って旧交を温めてつながりを確かめてくれる寅さんの映画はそんな役割を果たしてくれていたのだと思います
だから、バブル崩壊とともに寅さんシリーズもまた終了したのは当然なのかもしれません
失われた20年だかは、もう地元とのつながりも失せ、その地元も少子高齢化で消滅危機自治体だったり、都会でもシャッター商店街になってしまい
柴又のような昭和と変わらないところは珍しい存在になってしまっています
だから未だに寅さんを盆暮れに観たくなるのだと思います
というか、寅さんの映画の中でしか、人と地元とのつながりをもう見れなくなってしまったからなのです
全国どこでも同じ郊外のショッピングモールに行ってもそんなつながりは無いのです
さくらのお見合いのホテルは、紀尾井町の超一流ホテルのニューオータニですね
そりゃあ寅さん無理です
奈良は二月堂かと思われます
バター(笑)の記念写真は奈良公園の中にある鷺池の浮御堂です
御前様と冬子さんを寅さんがタクシーで送り届けたホテルは、格式高い名門、奈良ホテルです
西の迎賓館と呼ばれ国賓や皇族の方々がお泊まりになるようなところです
寅さんの冬子さん宛てのハガキのシーンのあと、寺男が境内を掃くその前景の冬子さんの部屋だったところに、奈良で寅さんがかったピンク色をした鹿のビニール人形がしおれてそのまま放置されていて、にくい演出です
ラストシーンは日本三景の一つ、天橋立です
駅裏のケーブルカーで登った山の上から見下ろしています
見下ろした天橋立の付け根の左手の甍が沢山みえる寺が知恵の神様・文殊菩薩を祀ってある知恩寺で、そこの7月にある文殊堂出船祭のお祭りで、テキ屋の商売をしているようです
知恵の神様のお寺をラストシーンに持ってくるのは洒落が効いていますよね