「アカデミー外国映画賞ノミネートは当然の名作です」永遠の人 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー外国映画賞ノミネートは当然の名作です
圧倒的な名作です
強烈な印象で打ちのめされました
胸が張り裂けそうです
タイトルからは熱烈な恋愛を描く物語を連想しますが、内容は異なります
その恋愛が壊れたことで、永遠に手に入れられない人になってしまった何人もの男女の28年に及ぶ愛憎の物語です
さだ子自身、平兵衛、隆、その妻
さらには、さだ子の父、さだ子の子供達のことです
そのたったひとつの忘れられない恋愛が壊れたことで、彼ら彼女達は29年もの間苦しむ事になります
中には自殺を図るもの、死んでしまうものまででる程に苦しみ抜くのです
物語は昭和7年、19年、24年、35年、36年と5章に分けて進行していきます
高峰秀子は公開時の実齢は37歳
彼女が演じるさだ子の年齢は、第1章が20歳とするなら、それぞれ32歳、37歳、48歳、49歳となります
彼女はそれを見事に演じ分けます
恋愛をし、結婚し、子供を産み育て、娘を嫁に出し、孫の顔を見る
女性の一生のその全てが憎しみで塗りつぶされたとしたならどうでしょう
その悲しみ怒りの大きさはどれほどのものでしょう
それをもたらした犯人はもちろん平兵衛の人の道に外れた所業です
しかし彼一人だけが悪いのでしょうか?
隆かも知れません
彼がさだ子を見捨てたからこうなったのです
平兵衛が反論するようにさだ子だったかも知れません
罪の無い子供までも許さなかったほどに、平兵衛を絶対に許さなかったからです
あるいは登場人物全てが荷担したと言うべきかも知れません
人によれば、戦前の大地主と小作人の関係性、つまり資本家の横暴が全ての元凶なのだと言うかも知れまん
次男なら、千両塚の伝説の後にそのように続けて話したかも知れません
そうした一面はあるかも知れませんが、それがテーマでは有りません
愛の純粋性
それは突き詰めるほどに不幸になるものなのでしょうか?
ラストシーン
恩讐の彼方に向けて、さだ子と平兵衛の二人は田畑の中の一本道を歩きます
あの29年前と同じ夏の日射しの中を急ぐのです
感動しかありません
熱い思いが次々に去来してしばらく動けませんでした
木下惠介監督の圧倒的な演出力!
雄大な阿蘇の麓を舞台にロケ地に選び、あの屋敷のセットの見事さ、そしてあのフラメンコギターの音楽!あの歌詞!
浄瑠璃の謡曲にも似た圧倒的な効果と感情の破壊力をもたらしています
アカデミー外国映画賞ノミネートは当然
日本映画オールタイムベストの上位に名を連ねて当然の名作です