「実相寺ウルトラ曼荼羅」ウルトラマン(1979) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
実相寺ウルトラ曼荼羅
※正式タイトル:実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン
"ウルトラマン(映画)" シリーズ第2作。
TSUBURAYA IMAGINATIONで鑑賞。
独特の映像センスを持つ実相寺昭雄監督がメガホンをとった初代ウルトラマンのエピソードをピックアップした総集編。
極端なアップなどの特徴的なカメラワークやひねりの効いたストーリーで、異色の魅力を放つエピソードばかりでした。
○第15話「恐怖の宇宙線」
ガヴァドンBとウルトラマンの戦いのバックに流れていたのは、声援とは真逆な子供たちの悲痛な叫び。子供たちにとっては自分たちの生み出した怪獣の方が正義。普段とは正反対の図式に考えさせられるものがありました。
ガヴァドンBを宇宙に連れ去り、「七夕の日に星になったガヴァドンに会えるよ」と、子供たちを慰めるために語り掛けたウルトラマンでしたが、「7月7日が曇りだったらどうするんだよぉ」との秀逸な返しに二の句が告げず。大人から子供への無意識のエゴイズムにハッとさせられました。
○第22話「地上破壊工作」
光と影の映像美が際立っているエピソード。夜の市街地で暴れ回るテレスドンをジェットビートルが攻撃するシーン、弾着の光と夜の暗さが素晴らしいコントラストで、幻想的なシーンだなと思いました。地底人の侵略の手際もいい。じわじわと不安を煽るサスペンス演出も冴えていました。
○第23話「故郷は地球」
個人的に初代ウルトラマンの中で屈指の名作だと思っているエピソード。現代にも通じる人類の身勝手なエゴと権力者による隠蔽が生々しく描かれていて、「本当に子供向けの番組なのか?」と疑いたくなる。エゴの犠牲者であるジャミラが断末魔の叫び声を上げながら泥の中をのたうち回り、世界の国々の旗をぐちゃぐちゃにしながら死んでいくシーンは胸が痛くなるほどの悲痛。ラストのイデ隊員の言葉も心に重くのしかかる。
○第34話「空の贈り物」
メガトン怪獣スカイドンを追放するべく、科学特捜隊があの手この手で奮闘する姿をコミカルに描いていました。実相寺監督らしさ全開の構図がこれでもかと繰り出され、ハヤタ隊員がベーターカプセルと間違えてスプーンを構える名シーンが登場したのもこのエピソード。BGMを用いた笑いも秀逸。
○第35話「怪獣墓場」
シーボーズが愛しくなる一編。宇宙に帰る術が分からず俯き加減で歩く姿には哀愁が漂っていました。「空の贈り物」と同じくコメディー編ながらも、なんとかシーボーズを宇宙へ送り返してやろうと必死になる科特隊とウルトラマンの活躍が人情味に溢れていて、心がほっこりさせられるエピソードでした。
実相寺監督作品には、総じて怪獣への愛と云うか、異形のものへの愛着があるな、と…。戦争体験を踏まえた上なのかもしれませんが、ただ殺し合うだけじゃなく、相手を理解することの大切さを訴えているように感じました。
ウルトラマンの描き方に関しても、彼へのアンチテーゼみたいなものを盛り込んでみたりして、一元的に「正義の味方」として描こうとしていない姿勢が垣間見え、それがひとつひとつのエピソードの深みに繋がっているのかもしれません。