「公開当時、原作者・高橋留美子を怒らせたらしいが、私はこの作品こそ、...」うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
公開当時、原作者・高橋留美子を怒らせたらしいが、私はこの作品こそ、...
公開当時、原作者・高橋留美子を怒らせたらしいが、私はこの作品こそ、ある意味では「うる星やつらの本質」を原作以上に体現している作品だと思っている。
「うる星」の世界とはまさに「終わらない前夜祭」そのものであり、この作品がファンの叶わぬ作品世界への「現実逃避願望」を象徴しているという事を、他ならぬ原作者が理解でき ていなかったというのは皮肉としか言い様がない。その世界を作り出した張本人であるがゆえに、ファンの「求めているもの」との認識に乖離があったのだろう。アイドルが自分のファンにならない(なれない)のと同じようなものだ。
作中における「繰り返しの学園祭前夜」とは「永遠に続く非日常」の象徴であり、そしてその非日常性こそが「うる星」の世界を根底で支えている原動力=魅力であり、「いつまでも皆と一緒に楽しい時の中にいたい」というラムの願いは、そのままファンの願いの代弁でもあるのだ。
それに対し、ラストのあたるの「それは夢だ」というセリフは、「終わらない非日常」から「平凡な日常への回帰」を促すものであり、それは「どんな楽しい事にも終わりがあるからこそ意味がある」という示唆なのだろう。
恐らくアニメや漫画において、現実と虚構の境界を描く事でメタ視点において「ファンと作品との関係性」を問うた、初めての作品だろう。この作品が後に「エヴァ」や「ハルヒ」、「らきすた」等にも影響を与えているのは周知の通り。
他にもこの作品の魅力を語り出すとキリが無い。面堂の車で迷路のような暗闇の町を走る不安感、外へ出られないと分かった恐怖感、廃墟になった街を背景にバカンスを楽しむ背徳的な高揚感、謎を解きに夜の友引町にハリアーで飛び立つときの爽快感、そしてハリアーの先端にちょこんと座り、煌く星空と町の夜景の中、 緑の髪を靡かせながらこちらを振り返るラムの幻想的なシーンの美しさetc.etc。何度見てもワクワクさせてくれる我が青春の神作品。