劇場公開日 1986年10月17日

海と毒薬のレビュー・感想・評価

全11件を表示

4.0【今作は、神の采配により、大いなる罰を受けるべき大学病院医療関係者の非道極まりなき行為を淡々と描いた作品であり、如何なるホラー映画よりも震撼する作品でもある。】

2025年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

ー ご存じの通り、今作の原作は、クリスチャンであった遠藤周作の同名作であり、上梓後に世間から激しい賛否を浴び、彼が失意の中続編執筆を止めた問題作品である。
  氏は、その作品で命の尊厳と医療の闇を描いたと私は思っているが、激しく糾弾した人達の考えは違ったようである。-

■粗筋
 太平洋戦争末期。
 敗色も濃厚となった昭和20年春。九州の大学病院で研究中の医学生、勝呂(奥田瑛二)と戸田(渡辺謙)は自身の研究と患者の治療に追われる日々を送っていた。
 そんなある日、2人は或る教授から米軍捕虜の生体実験に参加するよう申し付けられる。

◆感想<Caution!内容に余り触れていません。>

・今作を観ていると、日本人と言う大和民族が持つ、集団心理の恐ろしさをひしひしと感じる。それが、顕著に出たのが、大日本帝国軍の大東亜共栄圏思想である。
 表向きは、亜細亜の連携を謡いながら、実態は朝鮮の民、中華の民に対する数々の非人間的な行為の数々を行った歴史的事実である。
 その思想は、敗戦により表向きは無くなった風を取ってはいるが、いまだに時折、右の思想を持つ老人国会議員による、信じがたき発言として、発露しているのである。
 彼らは、自らの発言に対し、世間から激しい怒りを浴びる事で、
 ”え、私はそんなに悪い事を言ったのかな?”
 と本心では思いつつ、表面的には謝罪の意を表し、そのまま国会議員として居座っているのである。
 今作で、非道な行為を行いながら、朝鮮戦争勃発により罪を逃れた九州の大学病院の教授や戸田の様に・・。

・似た気質を持つ民族が、もう一つある。
 ご存じの通りアーリア人種至上主義を掲げ、ユダヤの多くの民を死に追いやった民族である。
 この民族と大和民族には幾つかの共通点があり、且つ彼の大戦でも同盟を組んでいるのは、周知の事実である。

・世界各国では、一定比率でサイコパスが現れ大量殺人を犯すが、民族そのものが選民思想に基づき、他民族を虐殺に追いやったのは、上記二民族と、アフリカの一部の民族だけである。
 上記二民族は、今作の九州の大学病院の教授や戸田の様に、何の罪悪感も無く、神の采配により、大いなる罰を受けるべき非道なる行為を歴史的に行って来たのである。

<今作は、神の采配により、大いなる罰を受けるべき大学病院医療関係者の非道極まりなき行為を淡々と描いた作品であり、如何なるホラー映画よりも震撼する作品でもあるのである。瞑して観るべき作品であろう。>

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NOBU

4.0若き日の奥田瑛ニさんと渡辺謙さんが狂気の医学生を演じる

2025年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

怖い

驚く

斬新

遠藤周作著の小説『海と毒薬』は中高生の頃、父から「お前にはまだ早い」と読むのを控えさせられていた作品でした。
以来、何十年も興味を持たないようにして来た作品で、今回、渡辺謙さんの若い頃の作品で映画があるというので、齢50を過ぎて初めて映画で「海と毒薬」のストーリーを知りました。

ショッキングな内容で、亡き父が高校生の私に読ませたくないと考えたのも納得しました。

戦争中に九州大学医学部の病院で実際に行われた米軍捕虜生体解剖事件の話で、人道的に問題のある、日ごろは理性や良心で抑えられている人間の蛮性を「戦争」が解放して、常軌を逸した行動を「正義」だと考えるようになる人間の思考の偏向の恐ろしさを、淡々と描いた描いた作品でした。

チスの人体実験のようなことをやっていたされる731部隊があったことが記録や証言によって明らかになっていますが、戦後日本でヒットした小説の内容がこれかあ…と軽くショックを受けました。昭和を生きた戦中派の皆さんにとっては、「戦時下の狂暴な思考」は他人事ではなく、身近な狂気として、冷静に受け止めていたのかなと思いました。

映画としては、若い頃の渡辺謙さんと奥田瑛二さんが戦時中の医大生で出演されており、金妻に出る前の奥田さん、独眼竜政宗に出る前の渡辺謙さんの、20~30代のお二人の演技が見もので、タイムトラベルをしたような変な感覚があって、渡辺さんはサイコパスな軍部の考えに違和感なく染まっていく医学生を、奥田さんは米軍捕虜の生体解剖に否定的な考えを持ち、良心の呵責に苦しむ医学生をそれぞれ演じておられて、怖いやら苦しいやら。

オールモノクロで、撮影場所も当時はまだ戦前の建物や景色が日本に残っていたんでしょうね、本当に戦前の映画を、「君の名は」や「また逢う日まで」の時代の映画を観ているようで、よく知った俳優さんたちが亡霊のようにみえたり、悪夢を見ているような感じでした。戦争がない時代に生まれて、戦争をしないと宣言した国に生まれてよかったです。

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山川夏子

4.0実話!

2025年1月2日
PCから投稿

本作の最大の怖い部分は実話ベースの物語というところです。
生々しくて、おどろおどろしく、見る者の心を引きずりこみます。

またこれから病のためもうすぐ死ぬ『おばはん』に対して主人公はブドウ糖を舐めさせ「うまかろ?」と聞くと、「うまかああ」と答える『おばはん』には泣いてしまいました。

またこの映画を見る前に原作も見ているのですが、原作と映画では大まかなストーリーは同じですが、かなり大部分をカットしています。
原作では「主人公は別にいて、その主人公が自分を診てくれた医者の過去を探る」というストーリーでしたが映画では主人公をばっさりカット。その医者を主人公とした過去の話しだけになっています。
でも映画はばっさりカットして正解だったと思います。なぜなら分かりやすく、テーマが視聴者に伝わるからです。

非常にいい映画でした。

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みる

5.0臓器が重くなった錯覚をおぼえた

2023年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

あまりにも重い真実。
そして当時あまりにも軽かった人間の命。

空襲がどうの原爆がどうのと
説得している言葉は言い訳に過ぎない。

この事件が起きた、あるいは被害者の立場は
戦争だからってのも
もちろんあるけれど
社会的図式は現代だってありえる構造ではないだろうか。

学校でも会社でも、病院でも
それぞれの社会の中で
組織に組み込まれて流され、感覚が麻痺し…。
殺人事件でなくたって
加害者にはいつだってなりうる。
または被害者にも。

生々しい手術シーンに吐き気も覚えたし
見終わったあとも息するのさえも苦しく
内臓がもったりと砂でもつまったように重くなった気がした。

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ひよこまめぞう

3.5原作を読みました

2021年1月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

自分の想像していた描写とちょっとは違いましたが、見応えのある作品。もっと夏っぽさと砂埃のイメージ。
当時私が生まれた年の映画とはなかなか感慨深いものです。

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ぽじのふ

4.0また見るだろう

2020年12月17日
iPhoneアプリから投稿

生かす手術も生かさぬ手術も淡々と同じ工程を踏む異様。
悩もうが悩むまいが結局同じ隘路にはまる戦時下の異様。
ではテンパってはいない筈の今の私は正常か?と考えると堪らなく怖い。
と思わせるから本作は成功作なのだ。
また見るだろう。

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きねまっきい

5.0今日的なテーマであるのかもしれません 海と毒薬のタイトルの意味とは 大海原に毒薬を一滴垂らした所で、何ほどの事があるのか?との問いかけなのだと思います

2020年7月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

強烈な映画でした
打ちのめされました
映画自体の内容にも、熊井啓監督の演出、出演者の演技、美術、その全てにです

医学を舞台にした映画の金字塔「白い巨塔」すら凌駕するほどのリアリティです
延々と続く手術シーンはもう逃げ出したいほどです

その反面、主人公達が取り調べを受ける、鉄格子の牢など、ある種のシュールレアリズムなセットなのです

1986年公開の作品です
しかしまるでその30年も昔1950年代に撮影されたかのようです
白黒フィルムで撮影だけでない、粒子の粗さが醸し出す風合というか肌触りがそうなのです
80年代やそれ以降にも白黒作品はいくつかあります
しかし、国内作品だけでなく、海外作品も含めて
同じ白黒映像であっても根本的に違うのです
記録映画的な印象をもたらす意図でしょう
あるいは50年代に撮影されるべき映画であったという告発なのかもしれません

暗くて、重くて、難しい
これは熊井監督が特典映像のなかで本作をこう表現されていました
正にその通りです
原作の遠藤周二から映画にならないのではないかと言われたとも

倫理観
それがテーマだと思います

それは絶対的なものなのだろうか?
相対的に動くものなのだろうか?
絶対的なものだとしたらその基準はどこにあり、誰が定めるのか?
相対的であってはならないなのか?
神の存在を信じなければ、絶対的な座標軸を持ちえないものなのか?
それはキリスト教で無ければならないものなのか?
ならば劇中にあるように、広島長崎への原爆はどうなのか?東京や福岡などの都市無差別爆撃はどうなのか?
神を信じさえすれば、絶対的な座標を持てるというがそう言いきれるのだろうか?
だから倫理観など相対的なものなのだろうか?
人としての倫理観を踏み外さないための座標軸
それを見失わないようになるためにはどう生きれば良いのだろうか?
様々な思いが渦巻くのです

人体実験という異常な事件は戦争中だけのものでしょうか?
超一流企業のエリートと言うべき優秀な人々が不適切経理という不正に大勢が組織として、手を染めたり、おかしい!と声を上げ告発しようとする幹部を追い出したりする事件が少し前にいくつもありました
それらと、どこが違うのでしょうか?

倫理観の座標軸がずれたなら、その立場にいたならきっと本作のような恐ろしいこともやるでしょう
同じことです

戦争中の軍部や医学関係者を告発しているだけがテーマの底の浅い映画では決して有りません

倫理観が腐食して座標軸を見失っいつつある私達現代人全てに共通するテーマなのです

本作が1986年というバブルに突入しようという時期に公開されたのは偶然ではないと思います

バブルにより倫理観は麻痺させられ、座標軸はズレで傾き方向性を見失ってしまい、その結果一体何が起こったのか?
それはその後の歴史が物語っています

そして21世紀も20年も経過した令和の時代
私達の倫理観の座標軸はどこにあるのでしょう?

キリスト教徒であるから、きっと神を恐れ原罪を信じているような人間であったと思われる外国人のスーパーエリートでさえ倫理観の座標軸がズレていたのか逃亡劇を起こしたのもついこの間のことです

コロナウイルス禍の先の世の中はどんな座標軸になるでしょうか?
もっと流れ流されていく座標軸なのでしょうか?

極めて今日的なテーマであるのかもしれません
海と毒薬のタイトルの意味とは
大海に毒薬を一滴垂らした所で、何ほどの事があるのか?との問いかけなのだと思います
自分だけが、この部署だけが、会社が、多少間違ったことをしたところでなにも問題はない
実害がないのだから良いではないか?
そのような人間になってはいないか?という意味合いなのでしょう

あなたは海に毒薬を垂らしても平気な人間に決してならないと言い切れるのでしょうか?
それを本作は突きつけているのです
汗がでてくる思いです

自分ひとりの行動で、クラスターを作るかも知れない時代なのです
これこそ神に試されているのかも知れません

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あき240

3.0奥田瑛二と渡辺謙が主演でモノクロ。

2017年10月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

怖い

この時期のモノクロ映画って意図的にモノクロであることを認識しづらい。
本人の同意を得ないことはもちろん問題外だけど、死刑になる人間を医学的に貢献させることのモラル的な問題は難しすぎて結論が出ないように思う。むしろ捕虜が死刑になること自体の方が問題だったんじゃないかと思うがどうなんだろうか。
原作を読んだ記憶があるが原作の方がテーマがスッと入ってきた印象。

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スベスベマンジュウガニ

4.5人の心は時として毒にも薬にもなる。

2017年7月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

第二次大戦中、捕虜を眠らせ人体実験を行った日本の医師達の記録。

戦争中の人体実験は各国で行われていた事ですが、映像でまざまざと見せられると、何とも言えない気持ちになります。

「これは人じゃない物だ」と語る言葉に、同じ日本人であっても腹立たしい気持ちで一杯になりました。

医療の未来のためという言葉で、全てを収めようとした医師達の無骨な精神に怒りを感じます。

そんな中、渡辺謙さんの飄々とした態度が印象に残りました。

これは、何年たっても色褪せることのない、後世に残したい作品の一つです。

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ガーコ

3.53.8

2016年4月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

非常に重たい映画。
扱っているテーマ自体かなりずっしりとしたものなのだが、演出や脚色によって何倍も重苦しくなっている。

戦時中アメリカ軍捕虜の解剖実験に加わる人たちの話。看護婦や医師など何人かの目線で描かれ、終始鬱な空気だった。
他にも危篤の患者を実験材料として使うことや、医学部長を巡る争いがあったり、主に病院の中で物語が進む。

でもこの映画の1番のテーマは「神なき日本人の罪意識」(引用)だろう。
無宗教であり、聖書のような統一の倫理や原理を持たない日本人にとって、大衆の流れや周りの人の目が聖書の代わりとなるものなのだろう。これは映画の中でも語られていたが、本当に納得させられた。
この映画の原作の著者である遠藤周作はキリスト教徒で、日本人の集団心理を考えたのがこの作品のモチーフであるらしい。

観終わったあとこの映画についてのレビューや解説を見たのだが、海と毒薬という題名について、しっくりくる説明がない。自分でも考えるほどよくわからなくなる。ちょくちょく映される海の映像の意味をぼくが理解している自信はない。

最後の手術のシーンは目を背けたくなる映像だった。もちろん生々しくグロテスクであるからなのだが、非人道的で恐ろしいく、うまく表現できないが、怖いからでもあった。

この映画を観て遠藤周作に興味がわいた。

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onaka
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