「ギララじゃつらいよ」宇宙大怪獣ギララ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ギララじゃつらいよ
怪獣映画ブーム真っ只中の1960年代、各会社が東宝ゴジラに続けと言わんばかりに怪獣映画に挑戦。
特に1966年末から1967年は…
東映『怪竜大決戦』、大映『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』、日活『大巨獣ガッパ』、そして東宝は『キングコングの逆襲』『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』が公開。
TVでは『ウルトラQ』『ウルトラマン』が放送スタート。
一年を通して怪獣が見れる、今となっては考えられない、ファンにとっては夢のようなステキな時代だった。
そんな中、意外過ぎるこの会社まで!
松竹。
日本全国を蹂躙する怪獣みたいな破天荒男はいるけど、れっきとした怪獣。
ホームドラマや人情劇の松竹が、一体どんな怪獣映画を…?
怪獣が日本中を旅して家族の温もりや人情に触れる…?
いえいえ。そいつは宇宙からやって来た。
その名は…
ギララ!
…うん。
ギララって名前もデザインも、
特撮も脚本も演出も演技も、
何もかもが、
THEチープ!
よくこれで東宝ゴジラや大映ガメラに対抗しようと思ったもんだ。
まず、主役怪獣のギララにまるで魅力を感じない。
一応、宇宙大怪獣。
なのに、デザインも咆哮もカッコ悪いし、頭のアンテナみたいのが間抜けに見えて、おバカ怪獣。
一応、都市破壊や自衛隊と決戦は見せてくれるが、暴れっぷりも口からの光線もステレオタイプ。
全く醍醐味や興奮を感じられず。ギララ自体これと言った特徴ナシ。
唯一の自慢は後年寅さんにゲスト出演して(実は寅さんより先に銀幕デビュー)、タコ社長にゴジラと間違えられた事。
いかにゴジラやガメラ、ウルトラ怪獣が魅力的で個性的な事か。
タイトルは“大怪獣”だが、東宝や大映の怪獣映画と差別化を狙って“SF映画”路線で売り出したという。
まあ確かにメカニックや月面基地など、こだわっているようではある。
怪獣映画の宿命は例外もあるが、人間ドラマ部分が弱い。
人間ドラマに定評のある松竹、そこは腕の見せ所。他の会社と違って、怪獣映画の中にも卓越した人間ドラマを発揮!…出来なかった。
人間ドラマのメインは宇宙パイロットたちの話。
特に序盤なんかはのほほ~んとして、真面目にSFやる気あるの…? 何だか本当に、“とらや宇宙に行く”な雰囲気。
月面基地で檜風呂に入るわ、男女の色恋沙汰あるわ…。
これで面白味があったらいいんだけど、メッチャつまんねー!んだからどうしようもない。
人間ドラマ部分も東宝特撮の方が、しっかりとツボを抑えていて面白い。
本編も特撮も残念。
ちゃんとそれは興行にも表れ、失敗。
結局松竹はこれ一本で怪獣映画は打ち切り。
その判断は正しかったのか、この失敗をバネにまた挑戦すればひょっとして…?
事実松竹は怪獣映画は脱退したが、『吸血鬼ゴケミドロ』などカルト怪奇映画でその特撮手腕を発揮する事になる。
…のだが、
むか~し昔、一度見て以来の久々の鑑賞。
その時はWOWOWで東宝以外の特撮作品特集で、大映は言わずもながな、東映も日活もそれなりに面白かったのに、こちらは…。
今回久々に見ても、その印象は覆せなかった。
またダメ出しして申し訳ないが…
よくこれでゴジラやガメラに対抗しようと思ったもんだ。
ギララじゃつらいよ。