「夕立の雨宿りをしながら罵倒し合う場面が印象的」浮草 ねこたまさんの映画レビュー(感想・評価)
夕立の雨宿りをしながら罵倒し合う場面が印象的
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今まで観たことがなかったけれど、中々面白かったです。
座長を演じた二代目中村鴈治郎さんが人間臭くて良かったです。京マチ子さんと鴈治郎さんが、軒下で夕立の雨宿りをしながら罵倒し合う場面が印象的です。
鴈治郎さんの旅先の古女を、枯れた感じで演じた杉村春子さんも凄く良かった。
鴈治郎さんと京マチ子さん、鴈治郎さんと杉村春子さん、若尾文子さんと川口浩さんの各々の対話の場面は、向かい合う2人を正面から細かく切り返すウエストショットの連続。
単調な撮影手法なのに、不思議と動きがあるように見えてしまう。
男と女の本性が、段々に剥き出しになっていくような感じで、小津安ニ郎監督がこんな演出を撮影でしていたことに驚きました。
無口な役の川口浩さんがハマって、他の若尾さんとの共演映画とは一味違う恋愛描写になっていました。
この時の若尾さんは、演技と可愛らしさとのバランスが良くて、私は一番好きな時期かもしれません。
旅芸人達が入り浸る売春宿でのやり取りが何度もあって、これは飄々としながらシニカルで良かったです。
お話しの展開として、結構大きな出来事が連続するのは、小津監督の映画ではあまり記憶がありません。
しかし、鴈治郎さんと京マチ子さんが縒りを戻して、桑名での再出発のために一緒の汽車で向かう場面は良いエンディングで、こういうまとめ方も有りだな、と思いました。
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