緯度0大作戦のレビュー・感想・評価
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原子力潜水艦に対する政治的な国策
く●ガキの時に見て、特撮の仕方を見破って、それを皆に言ったら、怒られた。
全てがジュール・ベルヌの『ネモ船長の話』が原型だが。
この映画の主旨は1966年の横須賀に入港した原子力潜水艦に対する政治的な国策なのだと思う。
しかし、一方で
小沢さとる先生の
サブマリン707
青の6号 と言った潜水艦の漫画がこの頃流行った。僕自身は、こう言った漫画にはまり込んで、潜水艦に対する親密度を高めたのだが、原子力潜水艦に対する国策イデオロギーにハマってしまったのかもしれない。
だから、
原子力潜水艦シービュー号
戦え!マイティジャック
と放映され、何回かこの類の映画は見たが、この映画を最後に、この類を『子供だまし』と見るに至った。
さて、この映画は
『タイムマシン』『モロー博士の島』等のウェルズ原作もリスペクトされている。
この映画を見て、『ちゃちい特撮』と『ジョセフ・コットンに対する憐れみ』と『効果音楽がその後の裏社会映画に使われた事(仁義なき戦い 等)』を悟り、日本映画を『質が低い映画』と誤解を持つに至った。
『皆、宇宙開発に夢中になって、なぜこの美しい地球に目を向けない』って。アメリカのアポロ計画に対するアンチテーゼなんかもあって、良い映画なのだろうが、『設定の稚拙さ』や『特撮がちゃちい事』がこの映画を駄目にしている。実に勿体無い。
だが、しかし、翌年の『トラ・トラ・トラ』が日米合作を少しばかり救う事になる。
しかし、日本人は『寅、寅、寅』に夢中になって、日本映画を国際的に上げていく努力を怠ってしまうのである。
日本の特撮映画は明日はどっちだ!状態へ
1969年7月公開
1969年は特撮界にとってどんな年であったか?
まず正月映画は、東宝特撮は怪獣映画も特撮映画も1本もなし
こんなことはかって無かった事です
他社は東映が日米合作でガンマー第3号 宇宙大作戦を公開しているのみです
これは宇宙SFもので宇宙人はでますが怪獣はでません
怪獣映画は1本も有りません
予算規模が大きくなる怪獣映画は急速に斜陽化する映画会社にとり負担が大きいということなのです
怪獣ブームは終わりつつありました
ウルトラセブンは前年の1968年9月に終了しました
最初は視聴率も絶好調でしたが、中盤落ち込んでしまい、終盤になってなんとか盛り返すような状況です
後番組は妖怪ブームに関連させた怪奇大作戦ですが人気が出ません
もはや怪獣映画を作ろうという雰囲気は映画界から消えてしまったのです
唯一大映だけが、前年のガメラ対バイラスが予算規模を大幅に削られながらも、子供向けにシフトしたのが支持されヒットしたのを受けてこの1969年も3月に新作ガメラ対大悪獣ギロンを公開します
しかもガメラは米国のテレビ局への放映契約を得ていたので大映も製作を継続できたのです
そんな中、米国のプロダクションから東宝に共同製作の話が舞い込みます
米国ではこの時期、物価や人件費の安い海外での撮影が流行していました
現代のIT 業界でシステム開発を中国やインドとかでやるオフショアと同じ考え方です
製作費は折半の美味しい話ですから、喜んで東宝も乗ります
ところがこのプロダクションが撮影開始後、途中まで撮ったところで倒産してしまいます
打ち切りっても損がでるだけなので、仕方なく残りを東宝の全額出資で完成させるしかなくなり、それでなんとか完成をみたという作品です
内容は米国側の持ち込み原作です
基本海底二万哩の翻案です
怪獣はでません
外国人俳優も今までの日本映画に出演してきた外国人俳優てまはなく、ハリウッドの作品にもまあまあ出ていたクラスの俳優で、外見の見た目も演技もそこそこですから雰囲気も洋画的になりました
アルファー号は海底二万哩のノーチラス号です
ふしぎの国のナディアのノーチラス号は本作のアルファー号の影響を受けています
形状はマイティジャックのマイティ号の雰囲気を残しています
マイティジャックは1963年の海底軍艦の現代版と言えるもので、1968年4月から1時間番組としてテレビ放映が始まったのですが、視聴率が極めて悪く6月末にワンクール13回で打ち切りになった伝説の番組です
サンダーバードの強い影響を受けて大人向けストーリーで展開した意欲的な作品だったのですが、視聴者には受け入れられなかったのです
仕方なく30分番組に短縮し内容も子供向けにして一部怪獣もだすようにして年末までの26話放映して終了しています
東宝特撮としてはこのリベンジとしての側面も有ったように思います
外光の下、側面の水中をも撮れるプールを使っての洋上や水中シーンは素晴らしい出来です
マットアート合成を駆使した緯度ゼロの海底都市も垢抜けています
しかし後半になると、クォリティーは一挙にダウンします
製作費が全額東宝持ちになったので急ブレーキがかかったと思われます
コウモリ人間、ライオン、大ネズミ、グリフォン
思い出すのも情けないものです
悲惨です
後の初代仮面ライダーの怪人より劣ります
というかショッカーと怪人の元ネタは本作のマリクだと思います
マリクの部屋には大きな鷲の紋章が飾られ、怪人を手術して作り出すのです
しかも、この手術のモチーフは1966年の東映の海底大戦争から実は来ていると思います
東映は本作を観てパクられたと気が付いたと思います
仮面ライダーはもちろん石ノ森章太郎の原作ですが、このショッカーは本作からの意趣返しであったのかとも勘ぐれます
ともあれ本作の興行は大失敗に終わります
海外公開もほぼ無くなります
こんな状態で海外の新しい特撮の流れに対抗するとかできるはずもなかったのです
一方、東宝の特撮映画は戦争ものの系譜もありました
日本海大海戦が本作の半月遅れの8月に公開されています
特技監督は円谷英二です
しかしこの路線も翌年1970年1月の彼の死去で風前の灯火となるのです
日本の特撮映画は明日はどっちだ!状態に陥ることになったのです
“緯度0”とは何なのか?
DVDで2回目の鑑賞。
Amazonで偶然、本作の「コレクターズ・ボックス」なるものを発見しました。本編の3つのバージョンがセットになっていました。こんな商品があったなんて、全く知りませんでした。特撮ファンとして一生の不覚!(笑)
現在東宝より単品発売されている日本公開バージョンの他に、海外で公開されたバージョン(「LATITUDE ZERO」)、そして「東宝チャンピオンまつり」で公開された短縮版(「海底大戦争‐緯度0大作戦‐」)が収録されていました。
というわけで、それぞれを観比べてみました!
・緯度0大作戦
本多猪四郎監督と円谷英二特技監督の最後のタッグ作。
日米合作のSF映画として企画され、資金をアメリカのプロダクションが全額出資し、キャストにも「第三の男」のジョセフ・コットンなどのハリウッドで活躍している俳優を招いた超大作になる予定でした。ところが、そのプロダクションが製作開始前に突然倒産してしまいました。東宝が製作費を全額出すことで何とか撮影に漕ぎ着けることが出来ました。
宝田明や岡田真澄など、英語が達者な日本人俳優がキャスティングされ、全編セリフは英語(一部日本語)で撮影されました。ですが、この日本公開バージョンは、日本人俳優は自身で、外国人俳優は声優による吹替版で公開されました。
現場の混乱が影響しているのか、信じられないくらいに特撮のレベルが低い…。そもそもα号と黒鮫号の対決がメインですが、レーザー砲や魚雷をバカバカ撃って来る黒鮫号に対して、α号は単なる調査船ですから攻撃装備を持っていないので、光線の応酬なんて場面は無く、黒鮫号に執拗に追い掛けられるα号が、ひたすら逃げ惑うだけ…。α号や黒鮫号のデザインはカッコいいし、クライマックスのα号飛行シーンなんかひたすら見惚れましたが、もうちょっと戦って欲しかったなぁ、と…。でも、α号に武器が搭載されていたとしたら、“緯度0”の主義には反するんだろうなとも思いました(笑)
それから、着ぐるみのクォリティーの低さがハンパない…。コウモリ人間、大ネズミ、グリホン―着ぐるみ感丸出しだし、何よりダサい…。初鑑賞のときには思わず「なんじゃこりゃ!」と叫んでしまいました。コウモリ人間は目玉がスーツアクターのものだし、まるで急造したアトラクション用スーツのようで…。大ネズミはちょろっとだけの登場でしたが、なんも言えねぇ…。グリホンも元になるライオンの出来がイマイチなので、全体的にチープ感が否めませんでした。
翻って、冒頭の海底火山噴火やクライマックスのブラッドロック島の最期は、円谷特撮の醍醐味を味わえる名シーンになっているだけに、ハリウッド俳優のギャラで製作費の殆どを持っていかれたのではないだろうかと勘繰りたくなりました…。
それにしても、「世にも奇妙な物語」的なラストシーンには息を呑みました。「ここでそんな感じのヤツを持って来るんかい!」みたいな…(笑) まさに現代の寓話…。結局、“緯度0”とはいったい何だったのか…? 夢? 幻? 天国? 異次元? それとも…? ―興味は尽きません(笑)
・LATITUDE ZERO
日本版より少し長い105分の上映時間でした。
メジャー映画会社が製作に参加していないため、アメリカではインディペンデント映画扱いになりました。小さな劇場でひっそりと公開されたようです。ヒットしたかは不明…。
字幕版なので、宝田明を初めとする日本人キャストの英語ゼリフを聴くことが出来ました。とても流暢で舌を巻きました。
ドラマ部分で細かなシーンの追加がありました。緯度0に到着してからの食事シーンなど、本筋には関わって来ない場面ばかりでした。特撮シーンの追加は無く、少々物足りない感じでした。効果音などの変更もありませんでした。
“黒い蛾”が、“ブラック・モス”ではなく、英語でもそのまま“クロイガ”と呼ばれているのには驚きました。クロイガ!(笑) 逆に、「はい艦長!」は日本語のままでした。「イエッサー!」ぐらい言えたやろうに…(笑)
・海底大戦争‐緯度0大作戦‐
「東宝チャンピオンまつり」の一環でリバイバル上映されたバージョン。オリジナル版から上映尺に合うようにシーンをカットした短縮改訂版です。どこがカットされているかとかを細かく書いても仕方が無いので、特に書くことはありません(笑)
…という具合に、3つのバージョンのレビューを書きましたが、本作が特撮史上に燦然と輝く“珍作”であるという認識を新たにしました。それでも異色作であることに変わりは無く、観れば観るほど味が出て来るのもまた事実…。不思議な魅力を持ったカルト的作品だなと思いました。
他愛もないSF冒険活劇…されど、夢やロマンがある!
1969年の日米合作による東宝特撮作品。
東宝特撮晩年の作品だからか、他の作品と比べると圧倒的に認知度は劣り、興行的にも失敗、かく言う自分も東宝特撮好きでありながら見たか否か記憶があやふやで、ほとんど忘却の彼方にあるが、今回たまたま機会があり見てみたら…、普通に面白いじゃん。
“SFアドベンチャー”と言うより、“空想科学冒険活劇”と称した方がぴったり。
海流調査中、博士たちは海底火山の噴火に巻き込まれ、国籍の無い船に助けられる。船が到着したのは、海図に無い“緯度0”。そこは、科学が進み、争いの無い海底世界のユートピアだったが、世界征服を企むマッドサイエンティストとの戦いが続いていた…。
童心ワクワクの設定、世界観、ストーリー。
同じ東宝特撮なら傑作「海底軍艦」を彷彿させ、ドラえもん映画の「海底鬼岩城」をも思い起こさせる。
最後まで結構楽しんで見てしまっていた。
某映画データ本では、“円谷英二の特撮が不調で失敗作”と書かれてあったが、そんな事はなかったぞ。
冒頭の海底火山、アルファー号と黒鮫号の海中戦…円谷特撮はしっかり見せ場を作る。
おそらく評価が低いのは、グリフォン、コウモリ人間、大ネズミのモンスターたち。
グリフォンとコウモリ人間は、欽ちゃんの仮装大賞レベル。さすがにあのぬいぐるみ感丸出しはね…(^_^;)
拉致された博士の娘はそのぬいぐるみを見て、ご丁寧にキャーキャー喚く。
でも、それがメインじゃないんだから、あんまり言わないで〜!(笑)
日米合作なので、従来の東宝特撮常連俳優に加え、ハリウッドスターも出演。(「第三の男」のジョゼフ・コットンら)
見ながら、今また日米合作でSF冒険活劇が作られたら…と、そんな期待と夢を抱いた。
スタッフに、製作・田中友幸、監督・本多猪四郎、特技監督・円谷英二、脚本・関沢新一、音楽・伊福部昭の“ゴールデン・チーム”。この5人が揃った最後の東宝特撮作品でもある。
人間ドラマは、基本は青少年向けだが、科学や平和を問うた大人向けの要素も。
ラストは、意味深でブラックな終わり方。東宝特撮の中でも極めて異色。
他愛もない冒険活劇と言ったらそれまで。
でもジョージ・ルーカスだって、他愛もない冒険活劇を目指して作ったのが、「スター・ウォーズ」である。
もしアナタが、まだ童心を失っていないのなら、オススメしたい作品である。
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