「60年前の日本は希望に溢れています 眩しいくらいです」いつでも夢を(1963) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
60年前の日本は希望に溢れています 眩しいくらいです
1963年1月の公開
今風にいうならメガヒットした同名の歌謡曲は前年の9月の発売
それの映画化という訳です
橋幸夫と吉永小百合のデュエットです
橋幸夫は既に何曲もヒットを出しているスター
吉永小百合はキューポラの街で注目を集めた若手スター
どちらも忙し過ぎてスケジュールが合わず別々に録音したとのこと
10年後の米国のスーパースター歌手、マービンゲイとダイアナロスのデュエットのアルバムもこれですから業界的にはよくある手のようです
発売していきなり大ヒット、年末の日本レコード大賞まで受賞してしまいます
これはもう映画化するしかない!
こういう流れのようです
というか9月発売で1月には映画公開ですから、発売して1ヵ月以内に映画化と企画内容を決定して、超人気者の二人のスケジュールを押さえ、10月に脚本完成、諸準備をして11月中に撮影を始めないと年末年始を挟みますから間に合いません
それほどレコードの初動のセールスが猛烈な動きだったのでしょう
当時の日本レコード大賞は紅白歌合戦並みの人気イベントで大晦日開催でしたから、映画のプロモーションとしてはこれ以上ないものです
これ1963年4月公開の山田洋次監督の下町の太陽と同じ流れです
本作での日活の大成功
今でいうメディアミックス企画が大当たりなら、松竹も同じことができるはず!というノリではないでしょうか?
下町の太陽の主題歌も、主演の倍賞千恵子が1962年9月に発売した同名のヒット曲です
レコードの発売までほぼ同時です
そして同年の日本レコード大賞は大賞がいつでも夢をで、下町の太陽は新人賞を受賞しているのです
松竹は日活に対抗して、本作に遅れること3ヵ月で下町の太陽を映画化したといわけです
本作が大ヒットしているのをみて急遽製作決定してのではないでしょうか?
本作は下町を舞台にしており、しかも底辺で暮らす人々達の日常を愛情のある視線で見つめて、健全な上昇志向、明るく健康的な恋愛にテーマにおいています
正に下町の太陽の元ネタというか原形と言うべき映画です
本作の様々なモチーフが、下町の太陽でも数多く出てきます
下町の太陽が、男はつらいよの原点と思っていましたが、、実は本作までさかのぼるべきかも知れません
60年前の日本は希望に溢れています
眩しいくらいです
登場人物達は、今やみな80歳くらいになっています
彼ら、彼女達が今の日本を作ったのです
あれから様々な進路に進み、恋愛をし失恋もし、挫折もし、就職、昇進、結婚、出産、子育て、リストラ、転職、子供の進学、学費の心配、単身赴任、病気、夫婦の不仲、そして定年退職、雇用延長、再就職
いまはもう自宅で本作のDVDを観て昔を懐かしむだけの日々かも知れません
そんな事を登場人物達の若い笑顔を観ながら思うと、涙が出てきそうになりました
おじいちゃん、おばあちゃんの青春はなんて豊かだったんだろう!
物的には発展途上国のような貧しい暮らしですが、心の豊かさは21世紀の今の日本よりずっと豊かです
濃密な人間性があったようにみえます
当時は当時でそれがうざかったのかも知れません
それでも、なんかうらやましいです