異人たちとの夏のレビュー・感想・評価
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ホラー映画なのに、こんなに心温まる映画って最高ですね!
この作品の主人公は原田英雄と言い、最近離婚したばかりの売れっ子TVドラマの脚本家だ。
そして、或る年のお盆の季節に彼は、不思議な体験をしたと言う夏物語なのだ。
これは、一応ホラー映画に属する作品なのだろうが、ホラー映画と言うよりは、むしろファンタジー映画と呼んだ方が近いような作品だ。
それ故、普段は、ホラー映画を観る事はない私でも、この映画だけは、例外的に好きな映画として、何度となく飽きる事も無く、繰り返し観賞する事が出来ているのだ。
私は臆病な性格な為か、それとも子供の頃に幽霊を見た経験が有るせいか、理由は今ではハッキリとは解らないが、ホラー映画は普段は観ないのだ。
こんな、ホラー映画嫌いの私が、この作品を初めて観たその時のきっかけは何かと言えば、この作品の監督が、私の大好きな、大林宣彦さんである事に加えて、物語の原作を尊敬する山田太一さんが執筆している事だ。
そして、キャスティングも、好きな俳優さんが偶然揃っていて、この映画は、自分の為に創られた作品ではないのか?と錯覚を起こしてしまう程にお気に入りの作品なのだ。
そして、何度も何度も観ているくせに、これを観る度に、総て分かっているのに、号泣してしまう。
今日も、このレビューを書く為に、再度、見直すと、また、決まって同じ処で、泣き出す始末で、自分自身でも、呆れ果てているが、涙が勝手に出て来てしまうのだ。
仏教では、本当かどうかは解らないが、亡くなった人の魂がこの世に残した家族に会う為に、年に1度だけ帰って来るシーズンがお盆だと信じられている。
そして、人々は、帰省して、墓参りをして、先祖供養を行う習慣が今でも有る訳だ。
私は、この映画を、お盆なので観ているけれど、墓参りには行っていない、親不孝者の私である。それ故に、この映画の原田と自分を重ね合わせて観てしまうから、涙が止まらなくなるのかもしれない。
この作品の終盤、ちょっぴり死霊が、原田の前に変幻した姿を現にするのだが、そのKEIと言う原田と同じマンションの住人だったと言う女性の亡霊のCGが決まらないのが、当時の邦画の技術なのか、予算の問題で巧く綺麗にみせる事が出来なかったのか、心残りの点も有るには、あるのだ。原田の特殊メイクも今一つ巧くないのは残念だ。
しかし、40歳で離婚して、子供との関係も巧く築いてくる事が出来なかった、原田の元に、原田の亡き両親が会いにやって来ると言うお話は、やはり、ホ-ムドラマを多数書き続けて来た、山田作品ならではの、最高の人情話になっている点こそが、本作の素晴らしさなのだと思う。
最近の医学研究の発表では、ホラー映画を観ると他のジャンルの作品を観るよりも、消費カロリーが多い事から、ホラー映画は、ダイエット向きだと言う統計がアメリカでは出たらしい。美容と健康の為に、これからホラー映画を観る事を習慣にするのも良いらしい!
と言う事で、8月のお盆のシーズンのお薦め映画としてこの作品を推薦したい!
現代版怪談だが、見所は染み入ってくる家族愛の演出の良さ
総合:80点
ストーリー: 65
キャスト: 85
演出: 80
ビジュアル: 65
音楽: 70
最初は何故急に両親が現れたのかわからなかった。怪談の現代版なのかと思ってみていた。だが幼い時に両親を亡くし、今また離婚したばかりの孤独な中年男に染み入る家族の愛情が、見ているうちにだんだんとしかしはっきりと感じられるようになる。特に片岡・秋吉の両親役二人の出演者の演技に加えて、このあたりの演出は流石に人の交流を多く描いてきた大林監督のうまさが出ている。だんだんとその愛情に癒されていく風間杜夫の変化が良くわかる。それでも風間杜夫が衰えていくのは、体力の消耗以上に彼が家族の愛情を必要としているからなんだろうと思っていた。
そんな家族との触れ合いの描写がとても素晴らしいと思った反面、物語にはいくつか疑問があって当初は腑に落ちなかった。あんなに息子を愛しているように見える両親は、現世に生きて衰弱していく息子と一緒に、黄泉の国に旅立つつもりだったのだろうか。それとも一時の交流のためだけに現れたのだろうか。
実は映画を見た後に解説を聞いたり調べたりしてようやくわかったのだが、両親は息子を守るために出現したということだ。憑りついた他の幽霊が弱った息子を連れて行かないように、彼に心の平穏を与えて現世に残れるようにしていたのだ。だから彼は踏みとどまることが出来た、ということらしい。
それならば納得できるのだが、最後の最後に彼を救ったのは両親ではなかったわけだし、物語はわかりにくい。だからそこらあたりが響いて、脚本にはあまり高得点を付けなかった。
それでも両親との触れ合いがとても良かったし、それだから最後に彼はまた自分と自分の家族について冷静に見つめ、それまで全く登場しなかった子供に、父親として普通に接することも出来た。またぎりぎりに追いつめられた名取裕子が突然に風間を訪ねる部分も良かった。最初はこんな変な奴いないよと思ったが、彼女は本当に最後の勇気を振り絞って、藁をもつかむ思いで最後の救いを求めに行ったのだ。だからあんなにぎこちなかったのだと納得だし、その演技もあとで見直してみるとたいしたものだった。最後に近い名取裕子との修羅場の場面は映像の技術もたいしたことないしちょっとがっかりだが、欠点を上回る情緒豊かな場面があって、最終的にはいい映画だったと言えた。
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