「新しい時代へ」安城家の舞踏会 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新しい時代へ
華族として栄華を誇った安城家。しかし、終戦と共に、他の華族同様、没落の道を辿っていた。新しい時代を前に、最後の舞踏会を開くが…。
吉村公三郎監督、新藤兼人脚本による1947年の作品。その年のキネマ旬報ベストテン第1位。
かつて日本にあった華族制度。
爵位を持ち、大邸宅に住み、贅の限りを尽くしていた。
戦後、華族制度は廃止。
それは新しい時代の到来だが、当の本人たちは戸惑いを隠せない。
さらに、贅沢品は没収され、邸宅も抵当に入れられる。
当主は知人に邸宅を売ろうとするが、恩を仇で返される。
長女は出世した元お抱え運転手から求婚されるが、受け入れるハズがない。
長男も関係を持った召使いから求婚されるが、冷たくあしらう。
華やかな舞踏会の裏で、哀れな愛憎が渦巻く。
もはやかつての栄華は無い。
生活も価値観も何もかもがひっくり返り、残ったのは、華族だったという見栄とプライドだけ。
自立心のある次女は新しい時代に向き合おうとするが、次女以外はかつての栄華を捨て去る事が出来ない。
だが、それらを捨て去る時が来た。
全てを失った絶望から、全てが真新しい時代を受け入れる時が…。
舞踏会の雰囲気も邸宅の装飾品もヨーロッパ映画のよう。
次女を演じる原節子も日本人離れした美しさ。(それでいて、小津安二郎作品ではこれ以上ない日本美人)
どこか日本離れした設定を、何の違和感も感じさせない格調高い日本映画として仕上げた二人の巨匠の手腕は賞賛に値する。
なかなか馴染みの無い華族やこの時代。
映画だからこそ、それらを見、知る事が出来る価値がある。
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