「両刃の剣」暗殺(1964) 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
両刃の剣
松竹ヌーヴェルヴァーグ三羽烏の中では、残念ながら個人的には篠田正浩が一番印象が薄かった。強いて挙げるなら「心中天網島」か。ちなみに、私は吉田喜重派。
尊王攘夷、佐幕入り乱れて誰がどういう立場で誰と結託して行動しているのか、混乱してくる(司馬遼太郎の原作を読むと、字面で登場人物たちを把握できるので、話の流れがつかみやすかった)。清河八郎自身が豪放磊落なのはいいが、どっちつかずの何を考えているのかよくわからない人物で、得体が知れない。およそヒーローとは言い難く、丹波哲郎を主役に据えた時点で承知の上なのだろうが。
日本の時代劇はアメリカ映画における西部劇同様、一種のジャンル映画なので、どうしても殺陣などの見せ場を期待してしまうが、その点が物足りなかった。肝心の“暗殺”シーンも呆気ない。ストップモーションや手持ちの一人称カメラといった手法も目立つが、成功しているようには見えず。
篠田正浩氏は今年3月に亡くなられた。合掌。追悼上映で鑑賞。
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