ある大阪の女のレビュー・感想・評価
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安さの面目躍如
溝口監督『浪華悲歌』(1936年)のリメイク。
親の借金を返すため金持ちの妾となる若い女の物語。
(戦前の『浪華悲歌』と高度成長期1962年の本作ではストーリーが若干違うが。)
『浪華悲歌』の冱え冱えとした山田五十鈴に比べて、本作の団令子はどことなくチープでセカンドラインだなあと思った。
必ずしも「セカンドライン=廉価版」が悪いという訳ではなく、団令子の、気安さ、隣のお姐ちゃん感が、本作のアヤ子という役に、ものすごくマッチしていた。
高嶺の花というよりは、男の人がちょっとチョッカイかけたくなる感じ、誰かの愛人にヒョイとなれちゃう感じが、絶妙だった。
身の丈にあってない小綺麗な暮らしに憧れる庶民の貧乏くささが、切実だった。
「あんぱんのへそ」と渾名をつけられた団の安さの面目躍如。
団令子といえば、小津監督『小早川家の秋』でのあっけらかんとした現代っ子役が印象的だが、本作ではその現代っ子(といっても50年前の映画だけれども)の影もサラっと見せる。
共演陣も皆イイ味。
昼間から酒臭いダメな父親役・藤原釜足が、本当に臭そうでイイ。
アヤ子を愛人にする社長役・小沢栄太郎が、本当に嬉しそうでウキウキしており、スケベそうでイイ。やってることはダメなんだけど、ちょっと可愛く見えてしまう。
その小沢よりさらにスケベで因業な山茶花究もイイ。
小ズルい婚約者役・川崎敬三も、イラっとするほどズルくてイイ。
ダメな男と、ダメな女の、どっちもどっちな騙し合い。
当然の帰結とも言える苦いラストを迎えるが、「今度は上手くやったるわ」と去っていく団の後ろ姿が、しぶとい。
可愛くてズルくて愚かで、それでいて純で、なおかつ、図太い。そんな団令子が素晴らしかった。
ダメな大人達の中、唯一真面目な妹役・初風諄が初々しいのも良かった。
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作中のジャズと川の流れが『エヴァの匂い』(1962)も彷彿とさせ。浪速のジョセフ・ロージーと言ったら、褒めすぎか。
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