雨あがるのレビュー・感想・評価
全6件を表示
ラス ト近くのセリフが、こころに響く
ラスト近くの主人公の妻(たよ)のセリフ『このままのあなたも立派ですもの』が、こころに響く。収入や地位よりも、身近な人から評価されることの方が大事というのは、普通に生活しているとなかなかそういう気持ちになれない。「俺はもっと評価されるべき。給料ももっと払うべき」などと思ってしまう。なので、このセリフに癒され、読後感の良い映画になっていると思う。
「雨あがる」というタイトルは、つらい不遇の時期が終わるという意味にも取れる。そうあってほしいと思う。
時代劇らしく理不尽な出来事や、圧倒的な剣の腕が描かれる黒澤明の脚本が良い。いくつか出てくる殺陣がいずれも見事。
近年のドラマに多いどんでん返しがないし、表裏のある人も出てこない、観ている人を驚かせない展開も良かった。
良くできた妻…
妻が実は一番強い。腕立つ浪人はその優し過ぎる性格故にどこの藩でも士官できない。そんな夫を妻は誇りに思い、夫を立てつつ、どこまでも着いていく。侍相手に木偶の坊と言い放った妻は格好が良かった。良いことやって、良い人でも必ずしも会社では成功しない。そんな風に思ってしまった。あの後、無事士官できたのだろうか。寺尾聰、宮崎美子の二人の雰囲気がとても心地良かった。
やはり、サムラ◯JAPA◯として賭け試合はペケよ♥
殿様に合う時に髭面は良くないと思うが。演出家が悪いのだろうが、汚らしく感じる。男らしさを表している所だろうが、元来そう言った俳優ではないと思うので、適役とは言えない。
剣道や武道の教本映画になってしまっている。つまり、それだけで、派手な殺陣が伴って貰いたい。
嘗て、黒澤明監督は自身が士族出身と漏らしたと聞く。
彼に限ったことでは無いし、それが彼らの作品に影響を与える事はないのだが、偉大な監督や人気のある監督は、晩年になると自分の血筋を気にする方が多いようである。勿論、日本だけではない。
ストーリーがコメディなので、寓話的小品で良いのだが、殺戮がいとも簡単に。何時代なのだろうか?江戸時代なら殿様の御前で髭面はタブーであった。ましてや、カイザル髭が登場しているが、明治に入ってからの事。士族出身にこだわるなら、その点も歴史に忠実であって貰いたい。
黒澤明監督の本心がどこにあったのか知りたくなる作品。しかし、コメディな寓話である。
・武士として賭け試合をしては駄目だ。そうです。試合は賭けては駄目だ。
・武士が町民に対して『貧しい者達』と俯瞰している。
見やすかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
腕は立つが優しすぎて出世しない浪人の物語。
人柄が非常に良く、自分より弱い者達に対して同情的な主人公。
しかし敗れた者にとっての最大の屈辱は同情なのである。
そういう側面もあり、武士としては出世できなかった。
流れ着いたある町の殿様は人間が良く、共に意気投合する。
剣術の師範にと誘われ、試験的に家臣らと木刀で手合わせをする。
当然のことながら連勝、挑戦する者はいなくなってしまった。
情けなくなった殿は自ら手合わせを申し出た。
当然殿にもボロ勝ち。いつものように、怪我はないかと気遣う主人公。
負けるのは構わないが、皆の衆の前で勝者に同情され、殿は激昂した。
と同時に主人公が武士に向いていない事も悟り、採用を見送ることに。
後日、爺らが来て、採用見送りとなった旨を告げる。
理由は上記だが、名目上は少し前に賭け試合した事が理由とされた。
賭け試合をするのは武士にあるまじき行為ではあったが、
人を助けるために金が必要だったために試合をしたのだった。
しかし経緯を問わず、採用見送りは覆らないと言い渡された。
賭け試合にいつも反対して夫を責めてきた妻が、ここで言った。
人間にとって、行動した内容をよりもその背景の方が大事と。
お前らのようなでくの坊には一生わかるまいと。
主人公夫婦は職を求め、そのまま次の町へと流れて行く。
事の次第を爺らから伝え聞いた殿様は思い直し、彼らを追う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時代劇はあんまり好きではないが、テンポがよく見やすかった。
あまりにも人の良すぎる凄腕侍という設定がおもしろい。
おれがよく批判する徘徊型の映画に属するが、
主人公のポリシーがはっきりしているので、グダグダにはならない。
夫が余りにもストイック過ぎていつまでも生活が貧しいが、
そういう夫を尊敬し、誇りに思う嫁はんは立派だった。
それにしても、殿の側近に対して「でくの坊」って言うか?
ダンナ共々、その場で斬り捨てられてもおかしないで(場)
それからこの嫁の言葉を伝え聞いて思い直すってのもどうやろ。
今イチ動機としては弱い気もするが。まあ細かい事はいいか。
黒澤監督が撮影していたら・・・
黒澤明が遺した脚本ということで視聴。黒澤らしさは、画面や演出などからあまり感じ取ることはできなかった。山本周五郎原作なので、不器用で出世とは縁遠い、心優しき浪人の話ではある。確かに主人公の三沢は、微妙な立ち位置。剣術を覚えた道場も名門、腕も確かで、物腰も柔らかい。弱い立場の者に対する思いやり、同情心が強く、奢るところがない。
しかし、慇懃無礼という感じ。妻に辛い思いをさせていて、いざ士官をと思いつつ、お城勤めで上役のご機嫌取りやら、つまらない文書仕事もしたくない。そして、剣術の腕を貧しい者たちに役立てるような場がない。剣術指南役になるとしたら、剣の道は己れの要らない迷いや傲慢を切り捨てるためにという剣術になろう。それは名君にこそ必要な道にも見える。あの後、殿様の追手が追いかけて指南役におさまることができたであろうかの余韻を残して終了。黒澤が監督していたら、もっと芸術的な作品になっていたのではと思わされた。
黒澤明監督の映画とは、テイストが異なるが、脚本としては味わいが残る作品だった。飄々とした寺尾、折り目正しく夫を愛する宮崎、元気が優っている殿様、説教節の松村、おきんの原田など演技が良かった。最近、ハリウッド等の善悪アクションより、人としてどうあるか的な邦画の方がしっくりくる。
寺尾聡よかった
寺尾聡が凄腕の剣客であるにもかかわらず人柄がよすぎて、周囲のひがみを買ってしまい、どこに行ってもうまくやれないという人物を演じていた。そんな非の打ちどころのない人物は、ドラマとして嫌ったらしいに決まっているのだが、寺尾聡からにじみ出る人柄のよさで好ましく見て応援したくなった。
人柄のよさだけではなく、殺陣のシーンは長回しが多く、本当にすごい剣の腕前になっているかのようであった。殺陣シーンはどれも素晴らしかった。
しかし、本音を言えば、剣の腕が一流でも人格がクソで嫌われ者が主人公の映画が見たい。
全6件を表示