「黒澤監督が撮影していたら・・・」雨あがる parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
黒澤監督が撮影していたら・・・
クリックして本文を読む
黒澤明が遺した脚本ということで視聴。黒澤らしさは、画面や演出などからあまり感じ取ることはできなかった。山本周五郎原作なので、不器用で出世とは縁遠い、心優しき浪人の話ではある。確かに主人公の三沢は、微妙な立ち位置。剣術を覚えた道場も名門、腕も確かで、物腰も柔らかい。弱い立場の者に対する思いやり、同情心が強く、奢るところがない。
しかし、慇懃無礼という感じ。妻に辛い思いをさせていて、いざ士官をと思いつつ、お城勤めで上役のご機嫌取りやら、つまらない文書仕事もしたくない。そして、剣術の腕を貧しい者たちに役立てるような場がない。剣術指南役になるとしたら、剣の道は己れの要らない迷いや傲慢を切り捨てるためにという剣術になろう。それは名君にこそ必要な道にも見える。あの後、殿様の追手が追いかけて指南役におさまることができたであろうかの余韻を残して終了。黒澤が監督していたら、もっと芸術的な作品になっていたのではと思わされた。
黒澤明監督の映画とは、テイストが異なるが、脚本としては味わいが残る作品だった。飄々とした寺尾、折り目正しく夫を愛する宮崎、元気が優っている殿様、説教節の松村、おきんの原田など演技が良かった。最近、ハリウッド等の善悪アクションより、人としてどうあるか的な邦画の方がしっくりくる。
コメントする