「鵺の鳴く夜の金田一」悪霊島 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
鵺の鳴く夜の金田一
Amazonプライム・ビデオで鑑賞。
原作は未読です。
原作は横溝正史の最後の長編小説となりました。
角川書店の雑誌「野生時代」に連載後単行本化され、すぐさま角川映画によって本作が製作・公開されました。
「犬神家の一族」のヒットによって自ら到来させた爆発的横溝ブームも下火になり、原作者が逝去した直後のタイミングで公開された本作は、ブームの掉尾を飾るには少々物足りない出来じゃないかなぁ、とは思いましたが、金田一映画としては異色の仕上がりだったことは間違いないかと…。
オリジナル要素として、三津木五郎がジョン・レノン殺害のニュースに触れたことで、若き日に遭遇した事件の回想をすると云う導入部が追加されただけでなく、日本の土着的雰囲気が強いはずの本作の主題歌に、ビートルズの名曲「レット・イット・ビー」を使用していて、角川春樹らしいアイデアが光っていました。これが不思議と合っているのだからすごい。
"ディスカバリー・ジャパン"を前面に押し出していた、市川崑監督が手掛けたシリーズのカラーは継承しつつも、斬新な試みを取り入れた本格ミステリー映画の監督に、メジャー大作だけでなく前衛作品も多く手掛けているイメージのある篠田正浩を起用しているのも、かなりの意外性があるなと思いました。
島の風景や事件の凄惨さを静謐にフィルムに収め、監督の妻である岩下志麻を美しく妖艶に捉える芸術的カメラワークを披露したのは、日本が世界に誇る名キャメラマン・宮川一夫。溝口健二監督からも信頼されたその職人技で、市川崑監督シリーズとはまた違った格調を表現しているように感じました。
物足りなかったのは、ミステリーとしての出来映えでした。
舞台設定は、因習の残る孤島、憎み合う二大旧家、複雑な人間関係、忌まわしい過去の因縁…と云った横溝作品の集大成のような要素が満載で、めちゃくちゃワクワクしました。
しかし、原作をまだ読んでいないのでどう云う改変が行われているかは分かりませんが、途中で真相の一端が簡単に予想出来てしまったことが残念だなぁ、と…。映像化の弊害かも。