悪太郎のレビュー・感想・評価
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粋な大正青年の青春と恋
鈴木清順の1963年の作品。
大正初め。素行の悪さから“悪太郎”と呼ばれる青年・東吾。母の知人が校長を務める中学に預けられた彼の青春と恋。
鈴木清順と言うと、独特の色彩感覚や奇想天外な展開の作風がもはやトレードマークだが、本作ではその片鱗は見当たらない。
意外や意外、真っ当な文芸&青春映画。
しかしこの年、「関東無宿」や「野獣の青春」も撮っており、実は器用な職人監督である事も思い知らされる。
さて、“悪太郎”とは、手の付けられない、悪戯好き、もしくは乱暴な男児の意。
主人公の東吾青年、勿論、困った破天荒な所もある。
転校が不服で登校初日から人力車に乗って登場、不合格になろうとわざと転入試験をいい加減に解答、試験を待つ間は茶を飲み煙草を一服…(笑)
が、決して荒んでいる訳ではない。
破天荒故、当然上級生に目を付けられるが、威張り散らすだけの奴には面と向かって物を言う。
文学好きな面もあり、読書を禁じる風紀係の上級生に啖呵を切る。かと思えば、その風紀係に文学の素晴らしさを丁寧に教える。
映画の後半はヒロインとの恋。想いは真っ直ぐに伝える。
粋な大正の青年像。
うっすら「倍返し」の人と被って見えた。
ラストはある悲しい別れ。
悲しみを乗り越え、一歩踏み出す主人公の姿には、若者へのエールが込められていた。
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