「☆☆☆☆★ 小津安二郎が仕掛ける。自身が手掛けた名作『晩春』を、新...」秋日和 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆☆★ 小津安二郎が仕掛ける。自身が手掛けた名作『晩春』を、新...
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小津安二郎が仕掛ける。自身が手掛けた名作『晩春』を、新たにコメディーとして再リメイク。
(但し、正式にはリメイク作品としては認定されてはいない)
映画の冒頭は法事の場面。そこで悪友三人組が悪知恵を働かしたからさあ大変。
かくして始まった、今は亡き友人の忘れ形見を《結婚させちゃおう会》の始まり!始まり〜!
尤もこの三人組。若くて綺麗な司葉子をダシにしては。何処か本来の目的は、若い頃に惚れて!惚れて!惚れぬいていた原節子に会いたいが為…って言ってしまえば元も子もない(u_u)
そこで佐分利信が、司葉子の相手として選んだ男は佐田啓二。
………ん?…ちょっと待てよ…と、ならない訳が無い。
だって、そりゃそ〜でしょ〜!
何しろ、この『秋日和』の2年前に。小津安二郎自身が撮った作品が『彼岸花』なのだから( ´Д`)オイオイ!
『彼岸花』にて佐分利信が、娘の結婚相手が佐田啓二と知り大激怒。周囲を巻き込んでは、しっちゃかめっちゃかにした事実は消えないぞ(`_´)ゞ…って、あくまでも映画の設定ではありますけどね(-_-)
とにかく映画の前半は、『彼岸花』との対象部分が多い。冒頭での法事も、『彼岸花』では結婚式。三人組が高橋とよに対して言う言葉も、『彼岸花』では「そうでなくてはいけないよ」が、「旦那さん長生きしますよ!」だし(笑)原節子と司葉子が住む、団地らしき家を始めとしたセット・会社等の設定(椅子やトイレの位置だったり、壁の色や廊下等、諸々と)のあれこれ。
ところが…。
「娘を行かすには、先ず母親から!」
悪巧み三人組がそう考えた映画の中盤辺り。その瞬間から、映画はハッキリと『彼岸花』から『晩春』へとシフトし始める。
此処から先は、『晩春』での原節子は司葉子となり。笠智衆の役割を、原節子が演じて行く。
モノクロ作品だった『晩春』と違い。(総天然色の)カラー作品として、コメディー色を前面に押し出す為に。『彼岸花』で大成功した三人組を巧みに使った演出は、まさに晩年の小津安二郎の真骨頂。「痒いところが出て来た」問答や。映画の後半に大活躍をする事になる岡田茉莉子。
悪人中年三人組から見たら、「近頃の若い奴等…」の1人にすぎないお嬢ちゃんの岡田茉莉子。
そんな彼女に、この三人組が吊るし上げになるくだりの爽快感等は、本当に溜飲が下がる思い。
大騒動の挙句。映画はやっと大団円を迎えるのだが。母娘が伊香保温泉へと旅行するその際に、再び笠智衆が登場。
この登場場面の設定及び。母と娘が布団に正座し、語り合う。その場面の1場面1カット。その構図。その空気感の1つ1つ。
その全てに(『晩春』との比較で)映画フアンならばグッと来るに違いない。
滞りなく丸く収まり。悪巧み三人組がしみじみと語る。
「案外、簡単な事なのに。社会も周りがあれこれと複雑にさせているんだな!」(正確では無いが、こんなニュアンス)
全くもう!お前たちは、どのツラ下げてのたくってるんだよ〜o(`ω´ )o
そんな事を言ってると、岡田茉莉子から言われちゃうぞ! (。-∀-)イーだ!
因みに、『晩春』で印象的だったリンゴの皮を剥く場面。
どうやら中村伸郎がリンゴはしっかりと頂いた様ですな〜(´-`)
初見 並木座
2019年6月3日 シネマブルースタジオ