劇場公開日 1956年3月18日

「戦争の爪痕」赤線地帯 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0戦争の爪痕

2019年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 終戦から10年も経った頃でしょうか、吉原の特飲店「夢の里」で働く女たち。300年も続く吉原も国会で審議されている売春禁止法案の成り行きを見守っている。とにかく、金を稼がねばならない女たちが右往左往するのだ。

 一人息子修一のために働くゆめ子(三益愛子)、汚職で投獄された父親の保釈金のために身を落としたやすみ(若尾文子)、失業した夫のために通いで働く娼婦のハナエ(木暮美千代)、黒人兵を相手にしていたミッキー(京マチ子)など、働く要因はそれぞれ。

 中でもハナエのエピソードは辛かった。夫が首吊り自殺を図ろうとするまで追い詰められていたのだ。昔ながらの、田舎から金のために売られてきた少女は終盤に出てくるしず子くらいで、みんな生きる為に身を落として働いているのだ。やすみは金を貸したり、男を「所帯を持つから」と騙して金をせしめ、相当な悪女と変貌を遂げていたし、ミッキーは何を考えてるのかわからないほどのお嬢様っぷりだ。

 法案が通ってしまえば売春など出来ない。しかし、彼女たちはそれしか手段がないのだ。文化国家などと復興を成しえたという謳い文句が憎々しく聞こえるのだが、戦後10年じゃまだまだ貧困層は多い。とにかく戦死して働き手がいなくなった家族も多い。不幸の連鎖とも言うべき、闇の商売は赤線が廃止されてからも手を変え品を変え続いているのでしょう。ただし、現代流行っているデリヘルなんてのは“性交すること”にならないので売春には当たらない(現実は知りません。本当に知りません!)。

 全編通して怪談映画のような音楽。エレキギターのスライドのみの音だったり、横山ホットブラザーズののこぎり音(お前はアホか)だったり、とにかく幽霊でも出てきそうな音楽で押し通していました。音楽は黛敏郎となってますが、本当は横山ホットブラザーズじゃないのか?と疑ってしまいました。

 最後に少女しず子のアップになるのですが、これがまた強烈なメッセージを含んでいるような気がします。この2年後には法律が施行され、商売が出来なくなるというのに…

kossy
マサシさんのコメント
2024年3月27日

こんばんは色々ありがとうございます。
ラストの少女の微笑む姿見て、トラウマになりました。
2回見ていると思いますが、初見へそんな事思わなかったのですが、この年になって見るとせつなく感じます。

マサシ