劇場公開日 1964年9月19日

「命の尊さ」愛と死をみつめて 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0命の尊さ

2025年5月6日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

タイトルのとおり、「愛と死」をまっすぐにみつめる作品でした。小島道子を演じる吉永小百合のあまりの純粋無垢な美しさと、対極的な病理の酷さ。我が身の辛さより相手を気遣う清らかな心を自然に演じられる吉永さんの魅力に圧倒されました。木藤亜也ちゃんの闘病記「1リットルの涙」を読んだときと似たような気持ちになりました(涙)。今作の原案が難病に冒され21歳で生涯を閉じた大島みち子さん本人の書簡だと見終えたあと知りました。劇中に出てくる「病院の外に健康な日を三日ください」は大島さん本人が死の4か月前に書いた詩だそうです。健康な日を3日だけ…。衰弱しながらもどこか神々しい吉永さんの姿と祈りのような言葉に涙が溢れました。自分の境遇を恨む気持ちもあったかもしれませんが、両親や恋人や周りの人々への愛情に昇華させようとする彼女の健気さに心を揺さぶられました。哀しみを受け止めきれずにもがく恋人・高野誠(浜田光夫)もよかったのですが、やはり父親の葛藤を抑えた演技で表現した笠智衆の姿に涙を禁じ得ませんでした。改めて命の尊さを思い知りました。

赤ヒゲ