ライラの冒険 黄金の羅針盤 : 映画評論・批評
2008年2月19日更新
2008年3月1日より丸の内ピカデリー1ほかにてロードショー
映画化に際しての必須課題3点はクリア
極寒の広大な雪原を白熊の背に乗って疾走する少女――この光景を見て、雪の女王に連れ去られた幼なじみの少年の救出に向かう少女ゲルダを思い出す。すると、また別の冬の世界を支配する白い魔女が想起される。こうした映像が喚起するイメージの連鎖は、今、ファンタジー映画を見る歓びのひとつだろう。本作はそれを再認識させてくれる。
おそらく、この原作の映画化に際しての必須課題は3つある。まず、いわゆるよい子ではない、自分の意志を貫く主人公ライラの人物像。次に小動物から昆虫まで目まぐるしく変貌するダイモンの視覚化。そして人間の言葉を話す白熊という存在の説得力。本作はこの3点はクリアしたと見た。
自分の抱くイメージに合うかどうかで判断する身勝手な原作ファンのひとりとしては、ニコール・キッドマン演じる美貌の野心家コールター夫人と、「ゴーストライダー」でも老カウボーイの心意気を見せたサム・エリオット扮する西部の飛行船乗りスコースビーの存在感に大満足。残念なのは、児童書らしからぬ設定のアスリエル卿の性格や魔女族の信条が描かれていないことだが、これは続編でのお楽しみか。
(平沢薫)