「優ちゃんが良かった?」クワイエットルームにようこそ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
優ちゃんが良かった?
もちろん蒼井優の自然な演技にはいつも見入ってしまいますが、今回は大いに笑わせてもらった徳井さん。そして、宮藤官九郎や保護者の振りをする金原さん(筒井真理子)の2人にも笑わせてもらいました。笑いじゃないほうの演技ではサエ(高橋真唯)もよかったです。芥川賞候補にもなったという小説を松尾スズキ自身が脚本・監督をつとめた映画。マルチクリエーターの才能を発揮しています・・・
それでも見終わったときには単なるコメディとしてしか印象に残らず、群像劇だとか『カッコーの巣の上で』などといったイメージは全く伝わってこなかったかも。女子専用閉鎖病棟なんだから、どちらかといえば『17歳のカルテ』を思い出してしまいました。
松尾スズキの作品や、俳優として登場する映画はなぜか面白い人が多い。この映画の主人公である内田有紀にしても、周りが面白い人間ばかりだという設定だ。オーバードーズで自殺未遂扱いされてしまうが、本来自殺願望があったと匂わせることで、つまらない人生でも面白く生きていこうとするテーマがあったように思えます。閉鎖病棟の患者は個性豊かで面白いはずなのに、娑婆に出るときには彼女たちを忘れ去らねばならないジレンマもあり、ちょっとは勇気を与えてくれるような映画でした。
ただ、その程度か・・・と思ってしまうのも事実。家族と疎遠になったり、身近な人が亡くなったりと、不幸の連鎖をも思わせておきながら、実は自業自得のような性格の者もいる(内田有紀や大竹しのぶ)。どうせならもっとコメディ色を強くしたほうが後味はいいだろうし、病気に関しても同情的にならずに済む。かなり笑えたのに、もっと笑いたかったというのはゼイタクなのでしょうか・・・と、ゼイニクを落とさねばと気づく自分がいる・・・
〈2007年11月映画館にて〉