劇場公開日 2007年10月20日

「悲しいスパイの半生。」グッド・シェパード 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0悲しいスパイの半生。

2007年10月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1961年、ピッグス湾侵攻作戦が失敗。失敗の原因が、CIA内部からの情報漏れにあると睨まれた。情報漏れの元を探るため、ベテランエージェントのエドワード・ウィルソン(マット・デイモン)に送られた情報を下に様々な調査が行われるが・・・。と、こんな感じだと、スパイアクション満載の、大活劇であるかのように誤解しますが、実際は違います。CIA黎明期、もっと言えば、CIAの前身のOSSの頃からのエドワードの半生を振り返るような話になっています。

元々、エドワードの役は、監督ロバート・デ・ニーロの暴露に依れば、別の俳優にオファーされたらしいのですが、スケジュールが遭わず断念。マット・デイモンにその役は回ってきたそうです。大学生の青年期から、子供が大学生になる頃の年齢まで演じていますが、前半の青年期は良いとして、後半の、壮年期を演じるには、彼はちょっと若すぎるような気がします。同じことは、エドワードの妻クローバーを演じるアンジェリーナ・ジョリーも同様。子供が大学生の母親にしては若すぎます。

実際の出来事を下地にしていますが、微妙にいろんなところが違っています。ワイルド・ビルはサリバン将軍(ロバート・デ・ニーロ)と言う人物になっていますし、CIAの長官はフィリップ・アレン(ウイリアム・ハート)ではなく、有名なアレン・ダレスです。とは言え、それぞれモデルにした人物に、微妙に同じようなところがあるようになっているみたいですが。

イェールのスカル&ボーンズに、結構焦点が当てられていますが、このスカル&ボーンズがアメリカの政財官界に大きな影響を及ぼしているのは、有名な事実。歴代大統領の多くに、メンバーが居り、現在のブッシュ大統領もメンバーであると言われています。それに加え、イギリスでの活動に際し、大学の教授や上流階級の数多くの人間が、情報活動に携わってる描写がなされていますが、これも事実。実際、第二次大戦のとき、イギリスでは、直ぐに役立ちそうな物理・化学を専攻したものだけではなく、歴史学者・数学者も情報活動に対して大量に動員されています。

167分と、非常に長い映画です。しかし、陰湿な情報活動を描いている割には、それほど長いようには感じませんでした。物語の起伏が余り無いので、そう言うのが苦手な人にはダメでしょう。スパイを描いた映画と言うと、ドンドン・パチパチの激しいものが多いですが、これは一線を画す、むしろリアルなスパイ映画と言っていいと思います。

勝手な評論家