「趣があるとはこのこと」ONCE ダブリンの街角で ドラコ・マコフォイさんの映画レビュー(感想・評価)
趣があるとはこのこと
まず、この映画をジャンル分けするのは
すごく難しいです。
言うとすれば音楽映画なんですが、
その中にほのかな恋愛の気配も隠しつつ、
それでいて切なさもあり、ん〜・・・
と迷ってしまいます。
あと、恐らく教養の無い人には
ただただ退屈な時間となるでしょう。
逆に日頃から心というものに目を向けたり
世の中のモノやコトを敏感に感じ取れる人には
オススメの映画です。
ジョン・カーニー監督の第1作目で、
映画にしてはかなりの低予算で作られた作品。
にもかかわらず口コミのみで
人気が爆発し上映劇場数が急増したことでも
有名な映画ですね。
やはり低予算なだけあって
カメラの手ブレや音響の悪さは感じますが、
それでもダブリンの空気感が
伝わってくるから不思議ですよね。
風の冷たさだったり、
生活の中の微かな温もりだったり。
そして、主人公2人に役名が付けられていない。
エンドロールでも「男」と「女」なんですよね。
「この物語は特別な誰かのものではなく、
とある街角のとある2人のありがちな物語。」
きっと、そういう意味を込めたんじゃないかなって
私は思います。
また、主題歌となっている「Falling Slowly」
この曲、歌詞が"男"の心情を表してて
本当に素晴らしいんです。
特に好きなフレーズが、
最後の最後終わりかけの
何かセリフのようなとこがありますよね。
「Take it all. I prayed to god too late. Now you're gone」
と言ってます。訳すと、
「全て消し去ってくれ。神に祈ったけど遅すぎたんだ。今ではもう君はいない。」
って感じですかね。(たぶん)
ここがもう、なんとも切ない!
両想いなのに年や夢や色々なものを理由に
違う道を選び離れて行く2人のエンディングに
すごくピッタリな、優しく切ない曲でした。
楽曲から、映画全体の造りまで、
まさに趣があるとはこのことです。
余談ですが、主演のグレン・ハンサードさん、
「はじまりのうた」に楽曲提供しています。
作中ではキーラ・ナイトレイが歌っていますが、
何度かライブなどでは
グレンさんとマルケータさんで歌ったこともあります。
そういう裏話も調べてみると面白いですよ。