自虐の詩 : インタビュー
続けて、主人公・幸江(中谷美紀)の世話を焼くアパートの管理人を演じたカルーセル麻紀と、幸江を一途に思い続けるラーメン屋の店主を演じた遠藤憲一にインタビュー。それぞれクセのあるキャラクターを演じた2人だが?(聞き手:編集部)
カルーセル麻紀&遠藤憲一 インタビュー
――本作に携わったきっかけは?
カルーセル麻紀(以下カルーセル):「業田さんの原作も知ってるし、話をいただいてすぐに“いいですよ”って答えたんです。それで初めて堤監督に会ったときに40歳から70歳の役って言われて“はぁ?”となったわけです(笑)。まあ、原作のおばちゃんがずっと割烹着を着ている役だったので、なんとなく想像つくんだけど(笑)」
遠藤憲一(以下遠藤):「オレは堤さんの『大帝の剣』で化け物メイクをして出ているときに出演依頼をもらったんです。この『自虐の詩』で最後の方に出てくる詩に感動して、化け物メイクのまま、堤さんと真面目な話をしました(笑)」
――2人とも、強烈なキャラクターでしたね。
カルーセル:「私は出演が決まってから、舞台が大阪の新世界っていうことなんで、西成のおばちゃんのしゃべり方を研究しに行ったんです。だけど、夜行ったもんだから、おばちゃんなんていなくて、オッサンとか酔っぱらいばっかりで“おっかねえ”とか言って逃げて(笑)、新地で呑みながら、そこのマスターたちに脚本を見てもらって、発音の仕方を教わったんです。私は北海道の釧路出身なのに、大阪でのTV出演が多かったせいか大阪出身と思われているから(笑)、台詞とイントネーションを特に気をつけようと思ってね。昔ね、この大阪弁のことで深作組の『道頓堀川』で酷い目に遭ったのよ(笑)。やっぱり大阪の映画だから、方言指導が入るんだけど、その方言指導の若い子が突然教えなくなったんですよね。で、理由を聞いたら共演の加賀まりこに怒られたんだって(笑)。だからまりこに“アンタ虐めんなよ、こっちが困るんだからよぉ”って言ったら、“こっちが感情移入しているときに、五月蠅いんだから。大阪弁なんて関係ないわよ!”っていうんです(笑)。結局、その子は来なくなって、真田(広之)と佐藤浩市と私で、途方に暮れたのよ(笑)」
遠藤:「オレの場合は西成には行っていないんですけど、ラーメン屋の役なんでチャーハンを作る訓練をしましたね。オレ、まったく料理が出来ないんですよ。だから合羽橋の問屋街に行って中華鍋とお玉を買って、近所のラーメン屋に教えてもらいに行きました。すぐにご飯で作らせてくれると思ったら、濡れたふきんをひっくり返す練習から始めて(笑)、その後かなり練習してチャーハンを作れるようになってから現場に入ったんですけど、本番ではさーっと作ってあっさり終わっちゃいましたね(笑)。まあ、一応何か作るシーンがあったら大丈夫なようにしていったんですが」
――2人とも、見事に映画の舞台に溶け込んでました。
カルーセル:「今回、私が凄いと思ったのはセットなんですよ。私が歩いて回った西成が、東京に帰ってきたらそのままセットになっていたんです。路地から、置いている小鉢、アパートに至るまで、全く一緒でビックリしましたよ。そのセットの精密さは昔と同じよね」
>>次のページへ