劇場公開日 2009年6月6日

アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン : 映画評論・批評

2009年6月2日更新

2009年6月6日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

トラン・アン・ユンが3人のスターを使って試みた泥だらけの実験

皮膚に細かく張り付く湿気、濃い緑が表情に落とす光と影。トラン・アン・ユン独特のエキゾチックで色気のある世界観に木村拓哉、イ・ビョンホン、ジョシュ・ハートネットらが美しく染まるのを想像した人は多いだろう。製作側もこの組み合わせに、芸術映画に商業的価値がつくことを期待したに違いない。しかしこの期待は見事裏切られる。彼はスターを使ってきれいなパッケージ商品を作り上げるのではなく、一緒に何かを見出そうと、泥だらけの実験を試みたのだ。

男たちは苦痛にのたうち回っている。木村拓哉は肉体的に、イ・ビョンホンは愛のために、ジョシュ・ハートネットは罪のために。探偵ミステリーの裏にあるのは、苦しみから逃れるため癒しを求め赦しを請う、人間と宗教の永遠の関係だ。そして問いかける、苦しみこそが人間を人間たらしめる最も尊いものではないのか、と。

監督は結論を撮影現場に託したのか、脚本は未完成に思える。それゆえ時に迷いが見られるものの、その投げかけに俳優たちが熱演で応え、謎めいた話をうまく引っ張っていく。また、探偵がシタオという肉体を捜すミステリーは時間的に前へ進む一方、探偵のトラウマを巡るミステリーは後ろに向かって進み、逆方向に同時進行する2つ(未来と過去、肉体と精神)の旅の果てに同じ答えがあるというアイデアは実にエキサイティングだ。ここにキリスト教のモチーフとハードボイルドの世界観が見事一体化すればスゴイ作品になったところだが、監督は実験の迷宮から、脱出できなかったようである。

(木村満里子)

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