「リンダ、リンダ、リンダ。」ミリキタニの猫 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
リンダ、リンダ、リンダ。
名画座にて。
私は、生命力に溢れた人間が大好きだ。
どんな境遇にあっても心だけは元気ハツラツでいたいもの。
なにがスゴイってこのお爺ちゃん、当時80歳のアーティスト。
(とはいえ路上画家。)本作の監督、リンダ・ハッテンドーフが
9.11テロの後、しばらく自宅に引き取って面倒を見ながら、
彼の生態^^;を見事なドキュメンタリーとして仕上げた作品。
いや、とにかくすごく元気なのだ!見事に歳を超越している。
カリフォルニアで生まれたにも関わらず、帰国したアメリカで
第二次大戦中に日系人強制収容所に送られ、市民権を捨てる。。
そんな数奇な運命を背負った男が無骨なまでにアメリカを嫌い、
戦争やテロを恥じ、心温かい日本人♪loveな眼差しをこちらに
投げかけてくる。まさに活動絵画!彼自身が絵具となっている。
テロに遭いながらも、平然と路上で絵を描き続ける彼。
リンダのアパートでTVニュースを観た彼が一言。
「アメリカって国は、なんにも変わっちゃいねえよ。」
捕えられた日系人たちが、どれほど酷い境遇に置かれたか。
強く恨みを口にするのでなく、ただ淡々と彼は描き続ける。
市民権を取り戻そうと尽力するリンダに対し悪態をつくほど、
(なんだ!この頑固くそジジイは!と私ですら思うほど)
彼の生命力はものすごく活発で、猛々しくて、容赦がないx
そんな彼から、次々と生み出される色合いにも圧倒される。
怒って怒って憤りまくる老人から生み出される画風は、
どこか懐かしく、優しく、深い温もりに満ちたものばかり。。
アーティストとしての誇りは決して失わず、多くを求めない。
リンダの部屋を、自分の工房のように縦横に使いまわして、
演歌を歌い、草木を植え(ここ笑える)、日に何十枚も描き、
遅く帰ったリンダを叱りつける…(爆)という(これは親心でね)
まぁなんともチャーミングなお爺ちゃんだ。
やがて、リンダの尽力の成果が表れ、
彼は生き別れた家族や親類、友人、そして市民権を取り戻す。
…どんどん立派に、そして小綺麗になっていく彼。
そんな彼にどうしても言いたかった…「リンダにお礼は?」
彼は「ありがとう」も「君のおかげだ」も言わなかったけれど
「リンダ、リンダ、リンダ~♪」と歌の歌詞みたいに名を呼んだ。
ラストシーンの一言もあいまって、
心の奥がエラく歓喜してしまった…そして最後にまた泣けた。
彼はようやく心の国境を越えた。
「ジミー・ツトム・ミリキタニ」という日系人を誇りに思う。
リンダ、彼の映画をありがとう。
(お姉さんもドエライ美しさ!遺伝なの?ご長寿の秘訣は?^^;)