劇場公開日 2016年8月27日

  • 予告編を見る

「リンダ リンダ リンダ!」ミリキタニの猫 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リンダ リンダ リンダ!

2020年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ジミー・ツトム・ミリキタニ。反骨のストリート・アーティストだ。カリフォルニア、サクラメントで生まれた日系人だが、第二次世界大戦中にツールレイク日系人強制収容所に送られ、アメリカに抵抗して自ら市民権を捨てた80歳の男。誰がどう見ても1人のホームレスにしか思えない。しかし、彼には反骨精神と生活のための信念があったのだ。

 ほどこしなんて要らない、絵を買ってくれ。社会保障なんて要らない。とにかく、自らをアーティストと呼び、ほのぼのとした猫の絵を描いてるだけかと思えば、9・11の惨状をも黙々と描いたりする。「NO WAR!」と平和を願う老人のには、母方の家族を広島の原爆で失ったという過去があり、9・11以降アラブ系アメリカ人が迫害されることを嘆いているのだ・・・12万人の日系人がそうされたことを思い出して。

 監督のリンダ・ハッテンドーフという女性は偶然にもこうした数奇な人生を歩んできた老人と知り合ったのですが、9・11以降に彼を自宅に招き入れ、奇妙な共同生活をすることになる。“三力谷”という珍しい姓。新聞記事にミリキタニ姓の女性が紹介されていて、彼女に連絡を取ってみたり、彼の市民権や社会保障について調べたりと、なにかと世話を焼いてくれる。

 あくまでも彼が主張を押し通すのかと思えば、そうではなかったのが残念なところだった。しかし、80を超えた老人なのだ。今までの人生が苦労に満ちていたと考えれば、もう充分に男気が伝わってきたので休んでもらいたい。あとは彼の絵を世に広めて、世界中の国に戦争がなくなることを望むだけ。

 絵についてはよくわからないのですが、どんな評価になるのだろうか。子どもっぽい絵だな~なんて思っていたら、過去には迫力のある墨絵を描いていたり、月に吼えるトラの絵も惹き付けられるものがあった。もちろん、ワールドトレードセンターの絵や原爆の絵には平和への祈りがこめられていると強く感じました。

【2007年11月映画館にて】

kossy