劇場公開日 2007年9月29日

エディット・ピアフ 愛の讃歌 : インタビュー

2007年9月25日更新

エディット・ピアフの生涯を描く本作を自ら企画し、脚本を執筆。渾身の一作に仕上げた監督オリビエ・ダアン(「クリムゾン・リバー2/黙示録の天使たち」)。マリオンとともに来日した監督に語ってもらった。(聞き手:編集部)

オリビエ・ダアン監督インタビュー
「流れるまま、感情に任せて観てもらいたい」

歌手としてより、女性として愛に生きたピアフにフォーカス
歌手としてより、女性として愛に生きたピアフにフォーカス

■エディット・ピアフという女性を描くこと

エキセントリックなエディット・ピアフの生涯を、見事にスクリーンに蘇らせたオリビエ・ダアン監督は、ひとりの女性像としてピアフを次のように語る。

自由に生きたピアフは、現代女性の先駆け
自由に生きたピアフは、現代女性の先駆け

「ピアフは当時としては大変モダンな女性だった。17歳という年齢ですでに親から独立し、パリでは少し住みにくい荒れた場所で暮らしていたし、生涯を通じて他人に支配されることはなく、自分が思うように人生を送った。そういう意味では、エディット・ピアフは、現代の女性にも良いモデルになるのではないかと思うよ」

そんなピアフを演じるマリオン・コティヤールは、監督のファーストチョイスだったという。そのキャスティングに間違いがなかったことは、映画を見れば一目瞭然だ。マリオンの演技に対して、監督は「出来るだけトランス状態にもっていってもらいたかった」と指示していたそうだ。「私は撮影の際、リハーサルは行わず現場で役作りをしてそのまま演じてもらうスタイルを取っているんだ。マリオンはとても感性が鋭く、私を信頼してくれていたし、私も彼女を信頼していたので、とてもうまくいくことができたよ」

実在した人物を描くため、脚本執筆段階では入念なリサーチを行い、「史実の部分に関して問題はないと自信があった」と語る監督だが、「彼女の素顔に迫っている心理的な描写の部分では、実際にピアフを知っている人に理解してもらえるかどうか、感想をもらうまで不安だった」

しかし、その脚本は、ピアフを知る人に太鼓判をもらうことができた。「脚本を書き上げた時点でピアフと交流のあった人々に会い、20年近くピアフの親友であり、現在も存命の方にも脚本を見てもらった。幸いにもたくさんの褒め言葉をいただいたよ。『まさにピアフそのものだ』という言葉は、一番嬉しかったね」

■撮影監督に日本人を起用

映画は、いくかの時代を縦横無尽に行き来する構成になっている。人間は生きている間に、過去を振り返ったり思い出したりするものだが、監督は時系列よりも、そうした感情的な流れを重視したという。

オリビエ・ダアン監督
オリビエ・ダアン監督

「この作品では、記憶というものがどのように機能するかを見せたかったんだ。誰でもそうだと思うが、そんなに重要でもない記憶や思い出が突然蘇ってくることがあるよね。しかも時系列がバラバラだったり。そういうことは、よくあることだと思う。だから、感情を中心に話を組み立てていった。観る方は論理的かどうかということよりも、流れるまま、感情に任せて観てもらいたいと思うんだ」

ちなみに本作には、フランスで活躍する日本人カメラマン・永田鉄男(日本では「大停電の夜に」を撮影)が撮影監督として参加。監督は「フランス人と少し違う感覚を期待して彼に頼んだ」というが、「テツオに参加してもらったことで、とても柔らかい光の映像が出来た。その光には、私自身もとても感銘を受けたし、この作品にとても合っていると思ったよ」と満足気に話してくれた。

「彼の作り出す光の世界というものが東洋的、日本的なものなのかは私には判断できないが、彼のバックグラウンドにある日本の文化が大きく影響しているのは、間違いないと思う。彼の作り出す光は洗練されて上品なんだ。でしゃばりすぎず、前面に出すぎない。とても繊細な光を作る撮影監督だよ。例えば、直接ライトを役者に当てるのではなく、床にティッシュを敷き詰めて、そのティッシュに反射させた光を役者の顔に当てるという方法もとっていた。そういう光の作り方がとても優雅だった。ただ、ティッシュがあちこちに散らばっているので、歩くときに注意しなければいけなかったけどね(笑)」

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