「証券会社のジェット機に米政府がキレた理由」私がクマにキレた理由(わけ) 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
証券会社のジェット機に米政府がキレた理由
本作は大学卒業後、証券会社への就職に失敗し、ひょんなことからセレブの子守となってしまった女の子のひと夏を描いた作品。
子守と子供の映画といえば「メリーポピンズ」が有名で、本作でもチムチムチェリーや傘マークといったその象徴が意図的に使われている。このハッピーなおとぎ話に反して、現実とくにセレブ家庭の実情は、こんなに問題山積じゃないかというセレブ批判が映画のテーマ。それはそれなりに面白いし、最後の最後でヒロインのスカーレット・ヨハンソンがブチ切れて、セレブ家庭を崩壊させてしまうところも痛快である。
ところが本作を現在見る場合、もうちょっとひねった見方ができる。舞台となるのがセレブの住む高級街区マンハッタン・アッパーイーストサイド、雇い主は合併がどうしたこうしたと忙しい証券会社社長である。夫婦は王侯貴族並みに贅沢な暮らしをしながら、ヒロインなどろくに人間扱いせず、安給料で滅茶苦茶にこき使う最低の人種として描かれている。
映画の全米公開は2007年8月。この頃にはすでにサブプライムローンの危険性が噂されてはいたが、リーマンブラザーズはせっせと買い込み、翌2008年9月、あっけなく破綻してしまう。俗にいうリーマンショックだ。破綻した金融会社は多数で、その後、政府から公的資金補助を受けることになったが、その公聴会の際、自家用ジェットで来たCEOたちがいたことから、政府に怒鳴りつけられたことは有名である。「政府がジェットにキレた理由」は、本作のヒロインがキレた理由と同じだろうw
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