劇場公開日 2024年1月2日

「さすが21世紀の偉大な脚本」スーパーバッド つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0さすが21世紀の偉大な脚本

2025年3月22日
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鑑賞方法:VOD

30歳まで童貞だと魔法使いになる。なぜそんな話が出てきたかというと、30歳まで童貞でいることが困難だったからだ。そんな偉業を達成したのだから魔法使いくらいにはなれるだろというわけである。
しかし現代はどうだ?。いつの間にか偉業でもなんでもない、ある意味で普通のことになってしまった。
本作の主人公セスは少々過剰だが、彼のような性に対する必死さが少しでもあれば現状のようにはなっていないのに。

半分くらいまで観たときは、こんなことをレビューに書こうかなと考えていた。しかし観終わってみると、そんなしょうもない内容の作品ではなかった。

高校を卒業し、親友と別の道を歩んでいく。それは人が成長していく上で誰もが通る道だ。
若いうちは特に、今のままでいることは難しい。大人になっていくと言い換えることもできるだろう。
失われるわけではなくとも、今と同じではなくなってしまう寂しさは誰もが感じることだ。
セスはそのことに強く反発しようとした。しかしその反発は、未来を壊すことではなく、思い出を盛大に彩り、終わらせようとしたわけだ。それが童貞卒業なのである。

すごくバカっぽくて、誰も彼もしょうもない行動をとるけれど、全てが新しい未来と形を変える過去の物語に帰結する。さすが米脚本家協会が選ぶ21世紀の偉大な脚本101に選ばれただけのことはある。

エンディング、モールのエスカレーターで降りていくセスは上階に残るエヴァンを見上げる。二人が別の道へと進んでいく未来の最初の一歩のようなシーン。
セスもエヴァンも望んでいた結果に近付くけれど、その表情は哀しみを含んで、最高にエモーショナルだった。

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つとみ