「少年の善性という神話を取り戻す」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 悠さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 少年の善性という神話を取り戻す

2023年11月26日
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鑑賞方法:映画館、TV地上波

『新世紀エヴァンゲリオン』は少年漫画の常識を変えた。私は少年漫画に明るくないが、ここまでナイーブに描かれたのはそれまでの主人公では碇シンジだけだろう。
結果的に『新世紀エヴァンゲリオン』はそのあまりに有名な主題歌の歌詞とは裏腹に"少年の善性"という神話を破壊した。「少年よ、神話になれ」という言葉に反発するようにTVアニメの碇シンジは善人である自分を否定した。
に対して今作はどうした?今作は少年漫画である。主人公は当然酷い目に遭う。理不尽に遭う。苦しむ。それはTV版と同じだ。しかし、今作は登場人物の主観的な心理描写を減らすことによって、事実ベースで物語が進行していく。少年漫画はアクション(暴力=事実)が物語を動かす。そこにいる登場人物がどう感じようが、思おうが、無慈悲に物語は進んでいく。
例えシンジが街の皆んなのことなんてどうでもよくて自分を救済したいだけだったとしても今作はシンジを、「街を救った英雄」として祝福する。まるで神のように、神話の人物のように。その過程の歪みなど関係ない。父との確執、性的興奮のもたらす背徳、母に似た少女を好きになる性的倒錯なんてわかりゃしない。彼は目の前の少女のために街を救ったのだ。碇シンジは今作で神話になった。
次作で堕天するのが楽しみだ。

悠
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