劇場公開日 2007年9月22日

さらば、ベルリン : 映画評論・批評

2007年9月25日更新

2007年9月22日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー

40年代のフィルムノワールを甦らせたソダーバーグ監督の実験作

第2次大戦末期、米ソの戦後処理が始まっているベルリンを舞台に、腕っ節の強くないハンサム男(クルーニー)や男を裏切る美女(ブランシェット)を配し、密告者と被害者やユダヤ人同士の感情的軋轢をミステリータッチで、モノクロームの画面に叩きつけた犯罪映画だ。

スティーブン・ソダーバーグ監督(ピーター・アンドリュース名義で撮影監督も兼任)は、1940年代風のカメラワークを駆使し、全盛期の“フィルムノワール”を甦らせている。古臭い“ワイプ”を使った画面つなぎや、ハイキーの強烈なライトによってとことんまで光と闇(ノワール)の美しさを強調した手法は、“照明の魔術師”と言われた撮影監督ジョン・オルトンの教科書(映画学科の学生のバイブル)通りで、もはや芸術の域なのだ。

ソダーバーグ監督は実際に、俳優たちに40年代の映画のような“身ぶり”を要求したというが、カメラワークで40年代のムードを作り出しているだけでなく、ベルトルト・ブレヒト的な演劇的な“異化作用”の実験さえしている。原題(The Good German)でも示される“善人”について、クルーニーとブランシェットが言及する会話が、実に奥深く感じられるのだ。

ナチのユダヤ人迫害問題については、ポール・バーホーベン監督の「ブラックブック」と比較できるだろう。40年代風な“クール・ビューティ”を身ぶりで体現してしまったブランシェットのカメレオン演技にうなった。

(佐藤睦雄)

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