劇場公開日 2007年11月10日

「年季の入った真打ちの落語家が、トリで語る人情話の一席を聞いてているかのような作り込まれた間の取り方で、引き込まれました。」やじきた道中 てれすこ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0年季の入った真打ちの落語家が、トリで語る人情話の一席を聞いてているかのような作り込まれた間の取り方で、引き込まれました。

2008年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 DVD化記念トーク&イベントで柳家三三師匠から落語版「てれすこ」の一席をききのした。内容は下記のようなもので、これはこれで、結構面白かったです。
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随分と昔の話
長崎のとある漁村で、誰ひとりとして名前を知らな
い世にも珍しい魚が網に掛かった。
「名前を知っている者には褒美を取らす」という高札を見た村の外れの男。
この男が「これは『てれすこ』という魚です」と申しでて、褒美を貰う。
男の話にどうにも納得できない代官は、「てれすこ」を干物にして再び男を呼び出し、この干物の名を開いてみた。すると男は、「これは『すてれんきょう』という魚です」と答えたものだ。
「これは前回お前が私に『てれすこ』と申した魚だ。何故干しただけで名前が変わるのだ。不届きものめ」と、男は牢に入れられる。
夫の身を心配した妻は干物断ちをして無事を祈るが、男の罪は死刑と決まった。
最期の望みとして、男は養子を呼び寄せてもらい、こう言った.
「この子が大きくなっても、イカを干したものをスルメと呼ばせるな。また命を取られるわい」
するとそれを聞いた代官は、「なるほど。生でイカ、干してスルメ。同じ魚でも名が変わることもあるわい」と小膝を打って納得した。
そうして男は無罪になった。
・・・・
 上記の落語のネタを膨らませたのが、この作品です。

 お馴染みの弥次さん、喜多さんに加えて、花魁・お喜乃の手玉に取られた弥次さんが、喜多さんと三人で沼津まで下る珍道中は途中もエピソードたっぷり。

 特に酒癖の悪い喜多八が酔いつぶれてて、常軌を逸したときの柄本明さんの演技はすごい迫力でしたね。(写真)
 あと可笑しかったのは、旅に出る前に、役者として芝居の演目でしくじった喜多八が首を吊るシーン。
 首を吊ったものの重さで着地し、助かった!と安堵の顔を浮かべた喜多さんだったが、紐を括っていた石灯籠に野良猫がニャンとも飛び乗ってしまったのです。ネコちゃんの分石灯籠が重くなり、哀れ喜多さんはその重さ分またまたつり上げられてしまいました。
 ニャンのことか知らんぷりの野良猫の無表情と首を吊って必死にもがく喜多さんの表情の対比が可笑しかっです。

 何気なく見はじめたDVDでしたがすご~~く面白かった!です。
 落語にも精通し、『しゃべれども しゃべれども』を撮った平山監督作品だけに、笑いのレベルが高く、まるで年季の入った真打ちの落語家が、トリで語る人情話の一席を聞いてているかのような作り込まれた間の取り方で、引き込まれました。
 ぜひDVDを見てください。
 時代劇に興味のない高校生や中学生でも、これなら気軽に笑えるでしょう。そして面白くも切ない弥次さんの恋もご賞味あれ。

流山の小地蔵