「飲食サービス業従事者の視点」幸せのレシピ 銀平さんの映画レビュー(感想・評価)
飲食サービス業従事者の視点
仕事一筋に生きる、NYのレストランの料理長ケイト。
ある日、シングルマザーの姉が事故死してしまい、彼女の一人娘を引き取り育てることになります。
そしてケイトの職場に、スー・シェフとしてやってきた男ニック。
3人の交流を通して、他人同士が家族のようになっていく様子を描いています。
店の従業員たちも皆優しい人ばかりで、3人を温かく見守っています。
純白のコック服姿のキャサリン・ゼタ・ジョーンズは格好良いですし、子役の女の子も可愛いです。
ストーリーに“料理を作る過程”をうまく練り込んである、ハートウォーミング・ムービーです。
あまりスポットライトが当たらない厨房内の様子、そこで働く料理人たち、そして生み出される極上の料理。そういうのを見ることができるので楽しいです。
男性が優位な料理人の世界で、ケイトは一流の女性シェフとして仕事をしています。
ケイトの仕事に生きる姿は、見ていて格好良いと思いました。ただ、ケイトの人間性には疑問を感じました。
料理人としてのプライドが高いせいで、お客と時々モメてしまい、そのたびオーナーに注意されます。
でもオーナーは彼女の腕は認めているので、彼女の立場を守ってくれています。
ですから、最後のあの辞め方は自分勝手で、お世話になったオーナーに対して酷いと思えてならないのです。
ケイトの職場が「厨房」というある意味閉鎖的な場所であっても、オーナーは、経営者として、客に誠意を尽くすのが当然の立場です。
料理に文句をつけられて謝罪するのも、作り直しさせるのも当然の対応です。
厨房を預かるシェフとして、そこを理解してあげなければならないと思います。
料理人だって、お客あっての商売ですから。
アルバイト店員じゃあるまいし、豪快にお客にキレて、そのまま店を出て行ってしまうのは、大人げなく非常識です。しかも、「これでスッキリしたわ」などと捨て台詞を言ってしまう。
最後のオーナーの悲しそうな顔、可哀想です。
一番重要な「オーナーとシェフの信頼関係」が成り立っていなかった。
それとも、ああいう態度はアメリカでは普通のことなんでしょうか。
全体的にはいい作品だと思いました。
恋愛の映画なんだからそんな細かい事を気にしても仕方ないとも思います。
でも、飲食サービス業の者として、どうしてもそこが引っかかるので書かせていただきました。