夕凪の街 桜の国のレビュー・感想・評価
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2007年上半期に出会った、最も素晴しい1本。
観終った後、試写室のイスからなかなか立ち上げれませんでした。“原爆”をテーマにした映画ですが、優しくて温かい映画です。でも、心に“ズシン”と響きます。
戦争を知らない吾輩にとって、敗戦から60年以上経った現在“原爆”とは忘れてはならない忌わしい“事実”ではありますが、それは既に“過去”にあった出来事だとこれまで認識してきました。ところがこの映画を観て、それが今にも存在している“現実”なのだということを、知らされました。
被爆を体験しながら生き残った人達は、皆当然『生き残れてよかった』と感じておられるのだと単純に思ってましたので、作中で皆実が発する『うちは、この世におってもええんじゃろうか?』という言葉が、非常に重く響きました。何の落ち度も罪も無い人達を、一瞬のうちに死に追いやり、更に生き残った人達にまでこのような何とも言いようの無い思いを抱かせてしまう“原爆”。しかも『お前なんか、死ねばいいと誰かに思われた』『原爆は、落ちたんじゃない。落とされたんだ』こんな思いを抱いて生きていた皆実の心中を思うと、何とも言えないやるせなさを感じ、心の底から熱いものがこみ上げてきました。
この映画は“原爆”という非常に重いテーマを描いてはいますが、決して悲惨な映像(被爆直後の広島の“地獄絵図”のような場面など)がたくさん出てきたりするわけではありません。むしろ終戦から13年経った広島の人々の復興へ向けた日々の暮らしや、現在(平成19年)を生きる若者たちの日常の目線を通して見た戦争を描き出しています。ですから優しさに溢れた映像によって、被爆した女性とその家族の絆、そして明日へ生き続けていく人々の希望が描かれ、暖かい感動を与えてくれます。
また昭和33年と現在、それぞれのパートで主演する2人の映画女優(麻生久美子と田中麗奈)が非常に素晴しい演技を見せてくれます。特に苦悩を抱えながらも、日々を懸命に生きそして儚くも散って逝く皆実を演じた、麻生久美子の演技は特筆物です。彼女は、映画女優として本当に素晴しいです。
実は先日、ラジオの収録でこの映画を撮られた佐々部 清 監督にインタビューをさせていただきました。監督は、『この映画は、日本人にしか作れない。その誇りを持って映画を作った』『決して若い人に向けてだけでなく、戦中派と言われる世代に向けても、「過去のことではない」というメッセージを込めて作った』と語ってくださいました。朴とつな中にも熱い思いを込めて語ってくださった監督の熱意は、スクリーンを通しても、ひしひしと伝わってきます。
「夕凪の街 桜の国」あなたも日本人として誇りを持って、この映画を是非映画館でご覧下さい。
桜の国の人間なら観ておきたい!
本日観て参りました。題名どおり良い作品だと思いました。他所の映画レビューが案外厳しいことと、劇場が少ないことから見逃す方も多いのではと思い書き込みました。低予算だったらしく苦言を言いたくなる場面もありましたが、原作漫画同様に一度目を通していただきたい作品です。近年大手マスメディアの思惑からか、戦争モノ映画が後を絶ちませんが、ド派手なGCを駆使して訴えるよりもこうして観る者を静かに考えさせる方が私は良いと思います。戦争は加害者側よりも被害者側にもっと目を耳を傾けるべきだと改めて考えさせられました。“夕凪”という言葉がやたら重く感じます。
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