「2度目の奇跡‼︎」夕凪の街 桜の国 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
2度目の奇跡‼︎
この世界の片隅に(映画)‥‥これが1度目の奇跡、同(原作)、夕凪の街 桜の国(原作)、同(DVD)という順番で鑑賞、読了しました。
この2ヶ月半、まだ行ったことのない広島なのにずっと旅をしている(場所も時間も自在に)気分のままですから、あっという間に作品世界に入り込んでしまいました。
従って、原作との比較やら、映像表現がどうか、みたいなお手並み拝見的な意識は全くなく、ただ原作と同じ世界を追体験するだけという、奇跡的に幸運な出会い方でこの映画を味わう事ができました。
麻生久美子さんの皆実さんは始めからこの人だったんじゃないか、というくらいイメージも合ってて、あの儚さや喪失感が目の前の現実のように思えて涙が止まりませんでした。
その他の出演者も恐らく全員、原作に惚れ込んで、その世界観を大切に慈しみ、愛おしんで、辛く切ないこともあるけれど、きちんと伝えていかなくては、という強い思いに溢れた中で作られた映画なのではないかと感じました。
関係するすべての方々に、心から、ありがとう、と申し上げます。
この世界の片隅に、のレビューでもたまに見かける『被害者の立場からしか描かれていない偏りのある映画』というニュアンスのコメントがありますが、そうでしょうか?
両作品とも、読了後、或いは鑑賞後に『我々日本人はなんて愚かな戦争をしたんだろう』という痛みが強く残ります。
近隣諸国に侵略戦争を仕掛け、あまりに無謀な対英米戦争まで始めた挙句、ヒロシマとナガサキの悲劇をまねいたことが、すずさんや皆実さんを通して否応なく想起させられます。
『暴力に屈するんかね』というすずさんの叫びには、他国を暴力で従わせ、自国民も暴力的に統制してきた国家が、より巨大な暴力の前にあまりに呆気無く崩壊するという、日本人にとってできれば見たくない不都合な真実が込められていると思います。作中の人物にとってはもちろんそこまで検証できる事実は知る由もなく、率直な感情の吐露ですが、そのような人達の人生を淡々と描くことで、とてつもなく愚かな加害者でもあった日本人の姿もあぶり出されていると私は思います。