天然コケッコー : インタビュー
山下敦弘監督 ロングインタビュー
■原作マンガのコマ割りに影響されないように、撮影時は原作を見なかった。
──くらもちふさこさんの原作を読んで、率直にどう感じられましたか?
「プロデューサーたちに『まず読んでみて』と薦められた時に初めて出会いました。少女マンガは読みませんからね。初めは正直読みづらいと思いましたね。少年マンガに慣れているので、少女マンガ独特の感性で描いてあるコマ割りが最初分かんなくて。ところが読み進めてみると、すごいことやってるなあ、と驚きました。ものすごく構成力もあるし」
──原作のマンガのコマ割りは、映画のフレームを作る上で意識しましたか?
「『天然コケッコー』の原作はすごくコマ割りが上手いんですよ。誰もいない風景を入れて、感情に訴えてみたりして。マンガを意識し出すと、すっかりマネしてしまいそうで、撮影中は絶対にマンガの画を意識しないようにしましたね(笑)。それだと原作を超えられなくなるし、映画を作る意味がなくなりますからね」
■お下げ髪の少女そよは、夏帆が一番イメージに近かった。
──右田そよ役の夏帆(かほ)ちゃんがピタッと物語にハマりましたね。
「右田そよ役のためにいろんな女のコに会わせてもらって、自分の中でいろんなそよをイメージしていたんだけど、夏帆が一番原作のイメージに近かったんですよ。リハーサルをこなすうち、どんどん良くなっていって、柔らかくなっていきましたね」
──ずっとお下げ髪じゃないですか。初めてチャン・ツィイーを見たとき(「初恋のきた道」)のような新鮮な驚きがありましたよ。
「そういえば、最近都会ではお下げ髪のコを見なくなりましたね。夏帆は髪を下ろしていると都会っぽいイメージになるんだけど、お下げ髪でだいぶ田舎っぽい女のコになりましたね」
──夏帆ちゃん含め、小・中学生役のコを田舎のコっぽく見せるために、何か演出をしたんですか?
「特に、何もしてないです。ゆっくり撮影させてもらったのが良かったんでしょうね。時間の経過とともに、彼女たちは田舎の風景になじんでいきました」
──四季折々の風景を撮っていますが、彼女たちには学校を休んでもらったんですか?
「実は、夏と秋しか撮影していないんです。秋に春の風景を撮ったりしてね。夏休みの期間はたっぷりと撮影時間を取れましたが、秋には土・日(曜日)に来てもらったりしてね」
──彼女たちの中で、成長してしまって困ったコはいますか?
「早知子役の一番小さいコですね。春に衣装合わせした時からすごく成長して、秋には赤いジャージーのズボンがツンツルテンでしたから(笑)。それに、彼女の歯(乳歯)が抜けた時がヤバかった! そのコの母親がたまたま歯科技工士で、現場で差し歯を作ってくれたので助かりました。ま、映画では1年半の期間を描いているんで、多少の成長はあってもいいんですけどね(笑)」