劇場公開日 2007年11月10日

「はぐれ狼ジェイソン・ボーンの逆襲が小気味いい」ボーン・アルティメイタム マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5はぐれ狼ジェイソン・ボーンの逆襲が小気味いい

2012年10月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、DVD/BD

興奮

知的

記憶を失ったまま社会に放り出されたジェイソン・ボーン。自分が誰なのか追い求めているだけなのだが、追い求めれば求めるほどCIAが知られたくない暗部に近づき、また追われるハメになる。

前作でボーンに古巣への復帰を促し、ボーンの本名まで教えたパメラ・ランディだが、組織の一員としてボーンを野放しにしては置けないジレンマに陥る。的確な支持を出す女性指揮官ランディを前作のジョアン・アレンが続投する。

そのランディの実力に嫉妬を覚えつつ、ボーンを執拗に追いかける局長、ノア・ヴォーゼンが登場。捜査ではランディの後塵を拝するが決して愚かではない。テロ対策局の局長という要職に就く風格も醸し出しつつ、今作の嫌われ者であるヴォーゼンをデヴィッド・ストラザーンが粘っこく演じる。

リアリティを重視した設定とアクションは前2作同様健在だが、さらにクォリティを上げてくるあたりは、このシリーズの真骨頂といえる。
とくにモロッコ・タンジールの複雑に入り組んだ路地と建物を使ったアクションが見せ場だ。
今回、さらに重要な役になったニッキーを追いかける殺し屋デッシュと、それを屋上伝いに追いかけるボーン、そしてボーンとデッシュの死闘は映画史に残る。
人ごみの中に入ってもニッキーの所在がわかるのは、まだらのヘアカラーのおかげで巧い演出だが、このヘアスタイルは前作からそうだった。先を見越しての設定だったとしたらスゴい。

相変わらずの素早いカット割りも磨きがかかり、1秒にも満たないようなカットにも必要な情報が盛り込まれ、無駄なカットが一切ない。それらがきちっと計算された長さと順序で並んだとき特有のスピード感を出す。
手持ちカメラの揺れも気にならず、むしろリアリティを出す効果がよく出ている。
「トランスフォーマー」シリーズでマイケル・ベイも手持ちカメラを使い同様に素早いカット割りをやるが、あれは目が回って吐き気がするだけの似て非なるものだ。(「トランスフォーマー」のレビューでも書いた)

「情けは人の為ならず」的なところがあるラストは、正しく強く生きようとするボーンの姿勢にぴったりだ。
TVの報道番組でボーンの安否が不明と知り、逃避先で微笑むニッキーがいい。水の中で動かないボーンとの割り振りも巧い。

マスター@だんだん